「非実在青少年」を削除、再提出へ 都条例改正案
東京都は青少年育成条例改正案を修正した上で、11月30日開会予定の都議会に再提出。「非実在青少年」を削除した上で、刑法に触れる性行為や近親間の性行為などを「不当に賛美しまたは誇張」した表現を条例の対象にすると修正。
東京都の青少年育成条例改正案問題で、都は改正案を修正した上で、11月30日開会予定の都議会に再提出する。当初案で18歳未満のキャラクターについて「非実在青少年」などとした部分は削除した上で、刑法に触れる性行為や近親間の性行為などを「不当に賛美しまたは誇張」した表現を条例の対象とし、内容によって「不健全図書」に指定して18歳未満への販売を規制することができるとしている。
修正案の全文は、山口貴士弁護士(@otakulawyer)がWebサイトで公開している。谷分章優(@himagine_no9)さんも公開しているほか、@beniuoさんは修正案の変更部分を分かる形で公開している。
石原都知事、再提出に意欲
都が今年2月に都議会に提出した条例改正案では、漫画やアニメなどの登場人物のうち「18歳未満として表現されていると認識されるもの」を「非実在青少年」と定義。非実在青少年による性交などを「みだりに性的対象として肯定的に描写」し、かつ「強姦等著しく社会規範に反する行為を肯定的に描写したもの」を不健全図書に指定し、18歳未満への販売を規制できるようにした。
これに対し、「あいまいな内容で拡大解釈され、事実上の表現規制につながる」と反対する声が高まり、6月議会で継続審議になったが、反対する民主党などと、賛成する自民党、公明党が対立し、否決された。だが石原慎太郎都知事は条例案を修正した上での再提出に意欲を見せていた。
「不当に賛美しまたは誇張」
修正案では、批判が相次いだ「非実在青少年」という文言を削除。その上で、条例の対象を定義する第7条に追加するものを以下のように定義した。
漫画、アニメーションその他の画像(実写を除く)で、刑罰法規に触れる性交もしくは性交類似行為または婚姻を禁止されている近親者間における性交もしくは性交類似行為を、不当に賛美しまたは誇張するように、描写しまたは表現することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を妨げ、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの
当初案は、キャラクターながら18歳未満という年齢を定義の1つとしていたが、修正案は刑法に触れる性行為や近親相姦などを「不当に賛美しまたは誇張」した表現を対象にしており、キャラクターの年齢は関係がなくなっている。
また、当初案では児童ポルノについて、都民は「何人もみだりに所持しない責務を有する」と定め、単純所持規制に踏み込んだ文言が盛り込まれていた。修正案ではこれを削除し、都民に対し「児童ポルノを根絶することについて理解を深め、その実現に向けた自主的な取り組みに努めるものとする」とした。当初案の「青少年性的視覚描写物のまん延防止」といった文言や、「まん延」の防止に向けた事業者と都民の活動を都が支援するよう努めるとした部分なども削除した。
一方、「13歳未満の者であって衣服の全部もしくは一部を着けない状態または水着もしくは下着のみを着けた状態」の写真などについて、「青少年が性欲の対象として扱われることが青少年の心身に有害な影響を及ぼすことに留意し」、13歳未満がこうした写真や映像の対象にならないよう保護者と事業者に求め、都知事はこのうち「著しく扇情的なもの」に対しては保護者と事業者に必要な指導ができるとしている。
修正案に対し、山口弁護士は、「不当に賛美しまたは誇張」の部分があいまいで不明確だと指摘。またTwitter上では、「キャラの年齢ではなく描かれた性行為で判断されるため、より広範な表現規制につながるのでは」といった批判が多い。
関連記事
- 漫画・アニメの「非実在青少年」も対象に 東京都の青少年育成条例改正案
アニメ・漫画のキャラクターも「非実在青少年」として「不健全」性の基準に含める東京都の青少年育成条例改正案の審議が近づく。ネット上では反対の立場から行動が起きている。漫画の現場からは「日本の表現が窮屈になる」といった懸念が出ている。 - 事実上の「非実在青少年」表現規制か──都条例改正案に批判相次ぐ
都の青少年育成条例改正案をめぐり、現役の漫画家や出版関係者、学者らが参加した「どうする!?どうなる?都条例」が開かれた。「改正案の本当の狙い」や出版・同人誌界の取り組み、「PTAは賛成しているのか」など、さまざまな発言があった。 - 「ゾーニングの顔をした表現規制」「社会の自立の、行政による他殺」──宮台教授
都の青少年育成条例改正問題を考えるイベント「どうする!?どうなる?都条例」で、宮台真司教授は「誤解」を招く改正案のあいまいさ、法益の疑わしさなどを批判した。 - 「文化が滅びる」――都条例「非実在青少年」にちばてつやさん、永井豪さんら危機感
都の青少年育成条例改正案に反対するちばてつやさんや永井豪さん、里中満智子さんらは「改正案が通れば文化の根を断つことになる」と強い危機感を表明。 - 都の青少年育成条例、継続審議が決定 6月に先送り
都の青少年育成条例改正案について、3月19日の都議会総務委員会で継続審議が決まった。改正案は6月の定例議会に先送りされる。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.