10月31〜11月4日(米国時間)に開催されたイベント「Adobe MAX」(カリフォルニア州サンディエゴ)で発表されたAdobeの人工知能「Adobe Sensei」。「Adobe Sensei」は日本語の「先生」が由来とのこともあり、日本でも注目を集めた。今回は、Adobe Senseiができることを具体的にレポートする。
Adobe Senseiが現在導入されているのは、「Adobe Creative Cloud」「Adobe Marketing Cloud」「Adobe Document Cloud」の3つだ。
Adobe Creative Cloudでは、「画像検索エンジン」「フォント認識」「顔認識」「要素に基づいたラベル付け」にAdobe Senseiが活用されている。
画像検索エンジンでは、ユーザーが画像検索すると、Adobe Stockが持つ大量のデータからディープラーニングによってユーザーが求めているであろう画像を推奨してくれる。また、画像のタグ付けも自動で行ってくれるという。例えば、Adobe Stockの画像検索で、JPEGやPNGなどの画像ファイルをブラウザにドラッグすると、それと似た画像を検索し表示してくれるといった機能だ。
フォント認識は、写真や手書き文字から類似フォントを提示してくれるというもの。文字の特徴からフォントが導き出される。
顔認識機能では、画像から目、鼻、口、眉などを認識するだけではなく、それらのパーツを自然な形で変化させることができる。例えば、口をもう少し開きたいというときには、口パーツの位置を把握し、他のパーツに影響を及ぼすことなく表情を変化させられる。これはAdobe Photoshopの新機能「ゆがみツールの顔認識機能」として導入されている。
また、顔認識技術はAfter EffectsのCharacter Animator機能でも活用。人間の唇の動きをモーションキャプチャーし、キャラクターをリアルタイムで同じように動かすことができる。実際にこの機能を使って、アニメ「ザ・シンプソンズ」の制作が行われたことが2016年5月に公式ブログで紹介されている。
要素に基づいたラベル付けは、建物や空といった各領域にラベルを付けをするというもの。このラベル付けによって、コマンド(例:「change the sky」など)で選択、操作できるようになる。
Adobe Marketing Cloudでは、データ分析にAdobe Senseiを活用。マーケティング投資を最適化するための顧客分析やタッチポイントの分析、データ分析の簡素化などに利用されている。例えば、広告のパフォーマンス分析を自動的に行ったり、見込み客を特定しその人たちへ向けたプロモーションを実施したりといったことができる。
Adobe Document Cloudでは、自然言語処理によりデジタル文書のテキスト認識を行い、視覚的要素に基づいて構造分析で段落、表、見出しなどを特定、類似文書を見つけその差分を明らかにし、ドキュメントの要約も可能にする。また、OCR時にスキャンしたドキュメントから構造を解析してテキスト化、文書から読む順番を自動的に抽出するドキュメントフローの抽出が行われ、これらにAdobe Senseiが活用されている。
Adobe Senseiは今後パートナーやデベロッパー向けに提供することを予定しているという。
(太田智美)
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