10月31〜11月4日(米国時間)に開催されたイベント「Adobe MAX」(カリフォルニア州サンディエゴ)では、複数の報道関係者たちがアドビシステムズに招待された。筆者もその1人。イベントではAdobeの人工知能「Adobe Sensei」が発表されたり、Adobeが現在開発中の新技術が公開されたりと盛り上がりを見せていた。
しかし、Adobe MAXが本領を発揮するのはこれからである。イベントで発表された新しい技術や体験にクリエイターたちがうずうずし、作品が生み出されていくのだ。そうしたことが、まさに深夜のホテルで起こった。
ある晩、Adobe MAX参加者の携帯電話にメッセージが来た。内容は、「Adobe MAXに参加する前に渡しておいた証明書の写真の解像度が低く、高解像度の証明写真データを数時間以内に送ってくれ」というもの。
ところが、サンディエゴでは東京のように駅前に証明写真の撮影機があるはずもない――「どうしよう」。
それならばと、参加者たちは深夜のホテルで動き出した。ドアを開けたすぐ横の白い壁をバックに彼女を立たせ、iPhoneのライトで照らした。部屋に集まりライトを照らしていたのは、招待されていた報道関係者たちだ。
影がなくなるよう、4台のiPhoneのライトを被写体に当てる。撮影機材もiPhone。その所用時間はわずか5分。
こうして撮影した写真を、iPhoneのモバイル版Lightroom「Adobe Lightroom mobile」で編集。露光量とコントラストを上げ、1分ほどの編集作業で証明写真が完成した。
少し影はあるものの、ここからPhotoshopなどで丁寧に影を取り除けば、本物の証明写真さながらの画になるだろう。
その後、この写真が実際に証明写真として採用されたかは定かでない。このような方法での撮影が、証明写真の撮影として適切な行為だったのかも分からない。しかし、この6分間には、ものすごいエネルギーとクリエイティビティーが存在したように思う。こうした舞台裏こそ、クリエイターたちが集まる祭典の最大の楽しみかもしれない。
(太田智美)
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