「手書きアニメ制作は若手の参入障壁」――「攻殻機動隊」の神山監督が絵コンテ制作をフルデジタル化した理由
「攻殻機動隊 S.A.C.」や「東のエデン」を手掛けた神山健治監督が、アニメ制作現場にWindowsタブレットを導入した感想を語った。
「手書きによるアニメ制作は、伝統工芸に近いところがある。若手が参入する障壁になっているかもしれない」──アニメ作品「攻殻機動隊 S.A.C.」や「東のエデン」を手掛けた神山健治監督が11月10日、都内で開かれたWindows Innovation Dayに登場。紙とペンを使ったアナログな手法がいまだに主流という日本のアニメ制作現場にWindowsタブレットを導入した感想を語った。
日本のアニメ現場はアナログ
神山監督は、2017年3月公開予定の最新作「ひるね姫 〜知らないワタシの物語〜」(以下、ひるね姫)の制作現場に、タッチペンが使えるWindowsタブレットを導入。紙からデジタルへの移行を本格スタートしたという。
「日本のアニメ現場では、紙に書いてからPCに取り込み、組み合わせていくのが主流。アニメーターと呼ばれる制作の主役がデジタル化されていないのが現状だった」と神山監督は話す。
ひるね姫の現場では、これまで紙に書いていた絵コンテ(映像の設計図)の制作をWindowsタブレットで完結させた。以前は作業場や自宅にこもって作業していたが、タブレットの導入で、スケッチブックを持ち運ぶように場所を選ばず作業できるようになった。アニメーターたちがタブレットを持ち寄って「絵コンテ合宿」も行ったという。
「作業効率が上がり、これまでの半分程度の時間で制作できた。書いた絵コンテをその場で簡単なムービーにしてみんなで確認したり、微調整したりすることがその場ですぐできるようになった」(神山監督)
デジタルはゲームのように没頭できる
海外のアニメ制作現場はCGが主流となっているが、日本では手書きが多数を占めるという。神山監督は「手書きによるアニメ制作は伝統工芸に近いところがある。若手が参入する障壁になっているかもしれない」と懸念をみせる。
タブレットの導入で、そうした壁を打破できる可能性もあるという。「手書きの良さをそのままデジタル化することで、新しい才能が入りやすくなるのでは」(神山監督)
一方、手書きに慣れているベテランもデジタル化に挑戦してほしいと話す。「デジタルはハードルが高いと感じるかもしれないが、実際に使ってみると案外使いやすい。ゲームをやっているように作業に没頭でき、仕事に集中できる時間も長くなる」(神山監督)
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