「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」シリーズに出てくるキャラクター「タチコマ」を2分の1サイズにしたロボットの実証実験が12月23日から行われる。実証実験ではロボット「タチコマ」による商品受け渡しサービスが可能だというので、胸を高鳴らせその内覧会に行ってきた。(12月22日午後7時追記:諸般の事情につき、開始を一時延期。決定次第I.GストアWebサイト 、アプリ内【お知らせ】にて発信予定)
攻殻機動隊 REALIZE PROJECTとは、企業、大学の研究開発者、公共機関、そして製作委員会が一体となって2014年秋から行われているプロジェクト。「タチコマ」を題材に、コミュニケーションロボットの社会実装を目指している。
タチコマによる商品受け渡しサービスの仕組みとしては、アプリをダウンロードし名前を登録して店舗に訪れ、タチコマの近くに置かれている白い台にアプリを起動した状態でスマートフォンを乗せると、台の中に仕込まれているセンサーがユーザー情報を取得。その情報がサーバに通知され、ロボットがユーザー情報を受け取るとスタッフによる遠隔操作によって名前を呼んだりあいさつをしたり、商品の載った台を押して持ってきてくれるという。ロボットの声は、タチコマの声を担当していた玉川砂記子さんの音素をベースにAITalk(エーアイ)で音声合成したものだ。
ところが、内覧で「タチコマ」ロボットが動いたのは手の部分のみ。サーバと遠隔制御システムとのつなぎこみは間に合ったものの、デモで見られたのは1つのサンプルモーションと音声の遠隔操作しか見ることができず、アームで商品受け渡しができることを期待していた筆者としてはとても残念だった。
karakuri productsの松村礼央代表によれば、うまく動けば専用アプリ「バーチャルエージェント・タチコマ」と連携して名前を呼んだりあいさつをしたり、複数のモーションが可能。「研究レベルでいうと正直10年くらい前のレベル。しかし、中身がどうだとしても見た目の影響がかなり大きいし、キャラクターに接客されるということ自体がバリューになっている。技術的に高度なことはやっていないが、コンテンツを使ってロボットを動かすということをやるのが今回の実証実験」と話す。
また、今回自律型ロボットにしなかった理由としては「安全性のため」「高度な技術を入れても、(コストが)収益を上回ってしまったら意味がない」と説明。「例えば、お客さんが押し寄せる中、ロボットって本当に自律的に探索して動く必要があるのかといわれると、正直ないんじゃないかというのがぼくの感想。極論言えば、動かなくても集客できるのならそれが最強だと思う。今故障して冷却中だが、それでもお客さんがきてくれるのであれば、それはロボットとして優秀」と述べた。
「今回の取り組みでは、最終的な意思決定は店員さんが行う。しかし、スマートフォンアプリとロボットの側の力を借りることで、店員ではできないサービスを実現している。今後は、自分がアプリ内で育てたタチコマの性格に合わせた振る舞いや動きを付け、個性を付けていきたい」(松村さん)
内覧ではうまく動かなかったが、今後実証実験を長期的に行う予定。その進化に期待したい。
(太田智美)
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