「Excelが固まった」 14万件のデータ、手作業でまとめ……神社・お寺の口コミサイト「ホトカミ」の挑戦(3/3 ページ)
神社・お寺の口コミサイト「ホトカミ」が注目を浴びている。14万件以上の寺社情報をカバーし、訪れた人から生の声が集まっている。「100年残るデータベースにしたい」と運営元は意気込む。
クラウドファンディング風に投稿募る「ご縁ポスト」
ホトカミへの投稿をクラウドファンディング風に募る「ご縁ポスト」も行った。一定数投稿すると、吉田さんが出雲大社に参拝して「リターン」を提供するという企画。リターンは、投稿者の氏名や願い事の奉納、絵馬の代筆などだ。
大学生のころ、山口・萩の松陰神社への旅費をクラウドファンディングで募ったことが、発想のきっかけだった。絵馬の代筆をリターンとして提供したところ、絵馬を代筆した人から「医者になれた」「転職に成功した」などの報告が絶えず、とてもうれしかったという。同じことをホトカミで再現できれば、と考えた。
大学時代のクラウドファンディングは、起業を考えるきっかけにもなったという。「歴史ツアーなど僕の活動は『面白い』と言ってもらえるけれど、お金を払ってもらえるほどのものなのだろうか」――旅費のクラウドファンディングを試したのは、そんな思いがあったからだ。目標とした3万6600円はわずか2日で達成。「自分の活動は、お金を払ってもらえる価値がある」と自信をつけ、歴史に関する事業を本格化していった。
「100年残るデータベースに」 VCの出資は受けず
今後もホトカミのデータや投稿を充実させ、1年半後ぐらいには「神社やお寺を検索するのはホトカミ」だと日本中の人に思ってもらえるブランドに育てる計画。10年、100年とじわじわ育てていく考えだ。
「100年残るデータベースにしたい」。ホトカミのデータは“最大の価値”だと考えている。
「100年後にWebサービスはないと思うので、『ホトカミ』というサービスは残っていないと思うが、ホトカミに集まった、一般の人のお参りの記録や生の声は残したい。このお寺がここにあり、こういう人がお参りしていたという記録は、100年、200年後の人にとっても、価値になるのでは」
同社は16年4月、資金調達を行った。出資者に株式を割り当てず、売り上げの一部を分配する「匿名組合出資」という形。日本古来の金融システム「頼母子講」に似ているという。株式は吉田さんが100%保有したままだ。
ベンチャーキャピタルから出資も検討したが、VCからの出資を受けると一般的に、5〜7年程度でIPO(新規株式公開)や事業売却などエグジットを求められる。ホトカミというサービスにはマッチしないと判断した。
「VCから出資を受けると短期で結果を出さなくてはならず、結果が出なければ、例えば、『墓石の販売サイトにして利益をあげろ』などと言われるかもしれない。それは絶対に嫌だ。ホトカミのデータを100年後に残したいのに、7年ぐらいの期限をつけるのは、コンセプトに反している」
サイトのページビューは徐々に増え、月間10万を突破した。まずは広告収入で売り上げを立てる計画。AdSenseを導入したり、寺社に関連するツアーやイベント、商品のバナー広告を出すといったイメージだ。将来は、ホトカミを通じて寺社を知った人が、座禅体験など有料サービスを予約した際、料金の数%を手数料としてもらう――といったビジネスモデルを検討。「収益は、100年後にも感謝される形でさらに生かしたい」
100年後の人も幸せに
神社やお寺はかつて、人々が集まったり、年長者が子どもを教える場になるなど、地域のハブになっていたが、現代、その役割が薄れている。一方で、行き場のない悩みを抱える個人は多い。
「社会問題の一番の根幹は、人とのつながりが希薄化していることでは、と考えている。ホトカミを通じて神社お寺に人が集まり、つながりが生まれれば、いろんな問題が解決したり、新しいものが生まれるのでは」。
そのつながりは100年後の人の幸せに貢献できると、吉田さんは考えている。
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