ニュース
SpaceX、2018年に人工衛星「SES-12」打ち上げへ(3/3 ページ)
SpaceX社は、2018年の2Q中に「SES-12」の打ち上げを行う。SES-12はどのような役割を持つのか。その詳細をSES社に聞いた。
政府や大使館など、ケーブルを通して通信したくない場合に、衛星は最適の通信となる。このオペレーションセンターも外部とネットワークでつながっていないため、外部からハッキングして衛星をコントロールすることは不可能
SESはルクセンブルク政府の宇宙資源採掘に関わるSpaceresource.luの計画にも協力している。宇宙資源開発の基本的な考え方は、「月と地球の間の小惑星のレアメタルや水資源を採掘する」というもの。宇宙で採掘したものを地球に持って帰ることは想定しておらず、それらを使用して、宇宙で物を生産することを考えているという。例えば、衛星を宇宙で作れれば、ロケットで打ち上げる事は必要なくなる。惑星や月に輸送ステーションのようなものができ、鉄道網をイメージした輸送ルートができると想像している。
地上から1000キロ離れているのが一般的な軌道で、ウェザーステーションや地球観測衛星がこの軌道を通っている。地上から8000キロの軌道では、SESだけが12基の衛星をオペレーションしており、ブロードバンド通信を提供している(O3bネットワークス)。そして約3万6000キロの軌道が静止衛星の軌道
オペレーションセンター。パイロットとエンジニアが衛星をコントロールしている。40の衛星のコントロールを約400人で行っている。同様のオペレーションセンターは、地球の裏側半分をカバーするため、アメリカにもあるという
ポジションやパワーなど数千のデータを常時アンテナで受け、オペレーターが修正などの指令を送っている。衛星は完全に止まっているわけではなく、太陽と月の引力の影響もあり、また、地球は完全な球体ではない。そのため、地球の位置によって重力などが微弱ながら異なる。こういった要素により、衛星は、少しずつ遠ざかる傾向があり、軌道に戻すための位置修正などが必要だという。例えば、衛星が軌道から1度ずれるだけで、欧州では通信領域の約700キロのずれにつながり、1億6500万世帯に影響がでる。若干ずれもアラートが送られ、オペレーションセンターでは(自動ではなく)マニュアルで人が調整している
このボールは、災害時の持ち運び可能な通信セット。2010年のハイチの大地震が契機となり、大災害でも通信環境を整えられる機材を開発された。ボールは20分で膨らませられ、中にはアンテナやラップトップ、チューナーレシーバーなどがある。飛行機でハンドラゲッジとして持ち運び可能。このボールが5〜6個あれば、SESの通信衛星でカバーされている範囲れあれば、どこでもWi-Fi環境が作り出せるという。既に実用化されており、世界中で全部で7個待機している。なお、アジアではフィリピンにあるとのこと。2015年に起きたバヌアツの大地震でも使われたそうだ
(太田智美)
関連記事
- 「オタク向けにしたくない」――“萌え”とは違うものを ギリシャ時代の彫刻を意識し「ONE PIECE」公式フィギュア制作
ルクセンブルクにあるオフィスを訪ねた。 - 空中から発進! 最先端の「宇宙旅行ビジネス」を見てきた
宇宙旅行ビジネスを行う会社「Virgin Galactic」のCEOが語った。 - 神奈川県と同じ広さの小国「ルクセンブルク」で見た、ちょっと意外なスタートアップ環境
民間が運営するインキュベーションと、政府系インキュベーション、2つの施設を見てきた。 - IT先進国・ルクセンブルクのワイン農家が、ITに頼らない理由
ITと農業の可能性を探ってきた。 - 火星に「氷の家」をつくる建築家・曽野正之さんに聞く 「地球も火星も同じ。結局住むのは人だから」
彼らが追い求めていたのは、「物体」としての建築ではなかった。 - カード番号とセキュリティコードが記載されていない新しい「クレジットカード」、ルクセンブルクのICTイベントで展示
ルクセンブルク最大規模のICTイベント「ICT Spring Europe 2017」の展示におもしろいものがあった。 - SpaceX、再利用「ファルコン9」の打ち上げをライブ配信へ
SpaceXが、ロケットの再利用を初めて試みる。日本時間の3月31日午前7時27分からリサイクル「ファルコン9」の打ち上げを実況する。 - ドイツとフランスで中波AMラジオ放送が終了
2015年末、ドイツとフランスで中波AMラジオ放送が終了した。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.