ダウンロード違法化拡大“賛成派水増し疑惑”に文科相「恣意的な操作は一切ない」 漫画家などの懸念は「重く受け止め、慎重に検討」
いわゆるダウンロード違法化拡大法案について、文化庁が自民党に説明した資料の内容が批判を受けたことについて柴山文科相は「誤った記載や恣意的な内容操作は一切行っていないと聞いている」と述べた。一報で、漫画家などからも懸念が出ていることは「重く受け止め、慎重に検討する」という。
権利者の許可なくアップロードされたコンテンツのダウンロードを違法とする範囲を、画像やテキストなどに拡大する著作権法改正案(いわゆるダウンロード違法化拡大法案)について、文化庁が自民党に説明した資料の内容に偏りがあると法学の研究者らが批判していた問題で、柴山昌彦文部科学相は、「誤った記載や恣意的な内容操作は一切行っていないと聞いている」と3月5日の記者会見で述べた。
また、法案については「漫画家の方々をはじめとして懸念が根強く示されていることは重く受け止めたい」などと述べ、慎重に検討を進めていく姿勢を示した。
ダウンロード違法化範囲拡大については、文化庁の文化審議会で検討されてきた。文化庁は2月22日、自民党の合同会議に、検討結果をまとめた資料を提出したが、「資料の内容に偏りがあり、審議結果を忠実に反映していない」と、明治大学知的財産法政策研究所が批判する文書を公開し、物議になっていた。
同研究所は、「文化庁の資料は、ダウンロード違法化に慎重派の委員の意見を省略し、積極派の人数を水増しするなどの処理」を行ったと主張。例えば資料では、違法化拡大に「積極的な意見」として7つ、「慎重な意見」として3つを挙げており、積極派が7人、慎重派が3人いるようにも見えるが、実際は、積極派委員1人の発言を4分割して紹介するなど、「積極的な意見は少数派にもかかわらず、多数派であったような誤解を誘っている」と指摘していた。
5日の会見でこの資料について問われた柴山文科相は、「法案の内容を、与党内で審査いただくに当たってどういう考え方があるのか、必要な参考情報を正確かつ簡潔に整理してお知らせしており、誤った記載や恣意的な内容操作は一切行っていないと聞いている」と述べた。
積極派の1人の委員の意見を4分割して記載したことについては、「意見の内容に着目し、1人の意見の中に複数の論点が含まれている場合は、論点ごとに記載しているとか、限られたスペースの都合上、報告書に記載済みの内容や重複する内容等については省略しているとか、そういうとことは当然行っているということだった」と話した。
また、また文化庁の資料では、ドイツやフランス、カナダを引き合いに、ダウンロード違法化拡大が世界の潮流であるように説明しているが、比較対象国の選び方が恣意的と同研究所は指摘していた。
これについて柴山文科相は「諸外国の事例は、ドイツ、フランス、カナダ、イギリスといった主要国の制度を紹介したと聞いている。内容は審議会の内容を整理したものであり、審議会の議論では、その他の諸外国の事例をさらに調査すべきという指摘はなかったと聞いている」と述べた。
法案については、「自民党内の了承もまだいただいていない状態で、慎重なご意見も聞いている。しっかりと丁寧な意見集約をして、関係の方々とも調整したい」と表明。「漫画家の方々をはじめとした懸念が根強く示されているのは重く受け止めたいと思うし、与党からも慎重意見が出ているのは事実。これを受けてさらなる対応について検討を進めており、本日、文化庁の担当者が、日本漫画家協会の方々から直接意見をうかがう予定になっている。いずれにしても今後とも、関係者のご意見を丁寧にうかがいながら制度設計や運用の検討を進めたい」と述べた。
省庁が与党に提出した説明資料に対して、学者から批判が出ることは異例だ。なぜこのような事態になったのか問われた柴山文科相は「集中審議をしていたということ、その前にブロッキングの議論を重ねていたことを踏まえた今回の運営プロセスだったかと思う」と述べた。
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