Red Hatが「コンテナと仮想マシンの一体化」に本格進出 VMwareのアプローチとの違いは?(2/4 ページ)
米Red Hatが今春から、コンテナと仮想マシンを一体化する事業領域に進出。4月のイベントで「どこにいてもイノベーションを起こせるようにする」をテーマに、コンテナ基盤「Red Hat OpenShift」の最新バージョンなどを発表した。同社の幹部は、競合するVMwareと比較した上での優位性を強調するが、両社のアプローチにはどんな違いがあるのか。
Kubernetesクラスタを効率的に一元管理
また、Red Hatがテクノロジー・プレビューとして発表した「Red Hat Advanced Cluster Management for Kubernetes」は、多様な環境で利用するようになったKubernetesクラスタを、効率的に一元管理するためのツールだ。正式リリースは今夏を予定している。
ユーザー企業は、これを使えばハイブリッド/マルチクラウドで稼働するKubernetesクラスタのライフサイクル管理を一元化できる。具体的には、さまざまな環境で動くKubernetesクラスタの作成、更新、削除などを一貫して実行でき、ポリシーに基づいた管理によってガバナンスやコンプライアンスも確保できる。
「Advanced Cluster Managementを使えば、1カ所から全てのクラスタに対してアプリケーションの配信を実行できる」とフェルナンデス氏は説明する。
Kubernetes上でコンテナと仮想マシンの一貫した管理を可能に
さらに、Red Hatが発表したもう1つの目玉ツールが、Kubernetes上でコンテナと仮想マシンの一貫した管理を可能にする「OpenShift Virtualization」だ。同ツールは、オープンソースプロジェクト「Kubevirt」の成果がベースになっている。これにRed Hatがエンタープライズ向けのサポートを付け、商用製品として提供するものだ。
当初はテクノロジー・プレビューとしてスタートし、正式リリース時にはOpenShiftユーザーに追加費用なしで提供する予定だ。
現在のクラウド市場では、ハイブリッド/マルチクラウドのプラットフォームとしてのコンテナ、それをオーケストレーションするツールであるKubernetesが注目されている。しかしながら、企業においてはコンテナではなく、仮想マシン上でアプリケーションを動かし利用している例がまだたくさんある。
OpenShift Virtualizationは、こうしたニーズに対応できるのが強みだ。ユーザー企業はこれを使うことで、Kubernetesの上で動くKVM(Linuxに組み込まれたオープンソースの仮想化テクノロジー)のハイパーバイザー環境をコンテナと並行して管理できる。そのため、仮想マシンで動くレガシーなシステムをマイクロサービス化などで無理に作り替え、コンテナに対応させる必要はない。
Red Hatではこの他、既存の仮想マシンの移行ウィザードも用意。「VMware vSphere」「Red Hat Virtualization」「Red Hat OpenStack Platform」などで管理される仮想マシンと、その上で実行するアプリケーションを、直接OpenShift VirtualizationのKVMに移行可能にするなど、ユーザー支援を強化している。
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