IBM、顔認識事業からの撤退を宣言 「人種プロファイリングや自由の侵害を容認しない」
IBMが、汎用的な顔認識技術の開発と提供を廃止すると発表した。黒人男性が白人警官の暴行で死亡したことを契機に全米で人種差別抗議運動が続く中、「今こそ、法執行機関が顔認識技術を採用すべきかどうか話し合うべき時だ」とクリシュナCEO。
米IBMは6月8日(現地時間)、汎用的な顔認識および分析のためのソフトウェア製品を廃止すると発表した。アービンド・クリシュナCEOから米議員宛の公開書簡という形での発表だ。「法執行機関による責任ある技術仕様に対処するコンテキスト」での決定としている。
5月25日に黒人男性が白人警官の暴行で死亡したことを契機に全米で人種差別抗議運動が続く中、この書簡は「米国で人種平等を推進するための政策提案」を概説するものになっている。
クリシュナ氏は「IBMは、他のベンダーが提供する顔認識技術を含む、集団監視、人種プロファイリング、基本的な人権と自由の侵害など、われわれの価値感と一致しない目的のために技術を使うことに強く反対し、容認しない」としている。「今こそ、法執行機関が顔認識技術を採用すべきかどうか、また、どのように採用すべきかについて全米で話し合うべき時だ」。
提言では、例えばAIを法執行機関で使うには、システムに偏見が反映されていないことを確実にするために徹底的に吟味するべきだと主張している。また、警察による違法行為に関するより厳格な連邦法の制定を要求している。
IBMは長く顔認識システムに取り組んでおり、昨年1月には顔認識AIの公平性と正確性の研究を推進する目的で100万点の注釈付き顔画像のデータセットを公開し、4月には「Diversity in Faces」という論文を発表した。
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