ソフトバンク、5Gの「容量無制限プラン」提供へ 「後日きちんと発表」と宮内社長
ソフトバンクが近く、5Gの「容量無制限プラン」を提供する。宮内謙社長が決算会見で「後日きちんと発表する」と明らかにした。コロナ禍の影響で上半期の消費者向け通信事業は減収だったが、立て直しを目指す。
「5Gの無制限プランは後日きちんと発表できる」。ソフトバンクの宮内謙社長は11月4日、決算会見でこう話した。プランの詳細は伏せたが、リリース時期については「もう少しお待ちください」と含みを持たせた。同社は11月13日に、5Gに対応した「iPhone 12」シリーズを発売予定。5G端末とプランをともに拡充し、契約者増につなげる狙いがありそうだ。
宮内社長は8月の決算会見で、今秋以降に5G端末の販売を本格化して「5G祭りを始める」と話していた。10月中旬の「Google Pixel 5」発売や、11月半ばのiPhone投入などが、その“祭り”だといい、同社長は「iPhoneにはすごく力がある。Pixelも順調だ。この調子でいくと5Gの普及は動き出す」と意気込んだ。
上半期は増収減益
ソフトバンクが新端末に力を入れる背景には、コロナ禍の影響によるスマホ販売台数の減少がある。
同社が11月4日に発表した2021年3月期第2四半期累計(20年4〜9月)の連結決算は、売上高が前年同期比2.3%増の2兆4284億円、営業利益が同6.8%増の5896億円、最終利益が同3.8%減の3151億円。他の事業でカバーして増収となったが、スマホ販売減の影響で、消費者向け通信サービスを含む「コンシューマ事業」は減収だった。最終減益となった要因は、保有する投資有価証券の評価損を計上したため。
コンシューマ事業の現状と展望とは
コンシューマ事業のセグメント業績は、売上高が前年同期比2.6%減の1兆3013億円、営業利益が同1.2%増の4063億円。端末の販売台数は減少したが、モバイル通信やブロードバンド、「ソフトバンクでんき」といったサービスの売り上げは伸びたとしている。
今後はさらなる成長に向け、端末やプランを拡充する方針。総務省が発表した行動計画(アクションプラン)に沿って事業を行うとしている。
総務省はこの計画の中で「市場全体の公正な競争を後押しする」とし、SIMカードを差し替えずに事業者を変更できる「eSIM」の導入や、MNP契約の手数料無料化を携帯キャリアに求めている。
ソフトバンクはこれに従い、MNP転出手数料を21年春に無料化する。さらなる減収が懸念されるが、宮内社長は、「Y!mobile」「LINEモバイル」を含めた3ブランド体制でプランや契約者向けサービスを充実させて乗り切る考え。「『契約数×ARPU(ユーザー1人当たりの平均売上高)』を伸ばすことでトータルの収入は増えていく」という。
eSIMの導入も進め、オンラインでの本人確認の仕組み「eKYC」と合わせて近く提供する。宮内社長は「事業を拡大するという意味でも、新しい方式を採用する」と述べた。
法人事業・ヤフー事業は好調
法人向け通信サービスやソリューション提供を含む「法人事業」のセグメント業績は、売上高が前年同期比6.5%増の3346億円、営業利益が同18.2%増の646億円。コロナ禍によってテレワーク需要が急拡大し、クラウドサービスやセキュリティソリューションの売り上げが伸びた。
傘下のZホールディングスが運営する「ヤフー事業」は、売上高が前年同期比15.1%増の5572億円、営業利益が同29.8%増の982億円。
巣ごもり需要の影響もあり、ECサイト「Yahoo! ショッピング」「PayPayモール」の取扱高が増加するなどコマース事業が好調だった。19年11月に連結子会社化したZOZOの業績も貢献した。モバイル決済サービス「PayPay」のユーザー数は3300万人(10月19日時点)を突破し、決済回数や加盟店数も前年同期から増えた。
NTTによるドコモ完全子会社化を警戒
通期での連結業績予想は、売上高が前年同期比0.8%増の4兆9000億円、営業利益が同0.9%増の9200億円、最終利益が同2.5%増の4850億円のまま据え置く。
だが通信業界では今後、NTTがNTTドコモの完全子会社化を終える予定。それに伴って勢力図が大きく変わる可能性がある。
この動きを踏まえた戦略について、宮内社長は「NTTは電柱から光ファイバーまで(通信インフラを)全部持っている。当社もNTTグループの光ファイバーを活用させてもらっている。この価格がもし変わると大変なことになる」とし、「公正な競争をゆがめることはないのか、ちゃんと公に話をしていきたい」とくぎを刺した。
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