「ahamo」のインパクトに勝てず“炎上”――KDDIが「分かりにくい割引」をやめなかった理由(3/3 ページ)
KDDIが12月9日に発表したauの新料金プラン。ネット上では発表直後から「結局条件付きの割引か」「期待外れ」などの批判が続出した。ドコモの「ahamo」発表でシンプルな料金設定に注目が集まる中、なぜKDDIは複雑な割引をやめなかったのか。
理由2: 複雑な割引は「来店」「相談」を生み、新たなビジネスチャンスに
もう1つは、複雑な割引がユーザーを携帯以外のサービスに取り込む起点になっている可能性だ。携帯サービスに疎い人は、どれだけ公式サイトやカタログを読んだとしても、複雑な料金プランや割引を完璧には理解できないだろう。
この「理解できない」にこそ、商売の可能性が潜んでいる。ユーザーはプランを理解できないからこそ、ショップなどの店舗へ足を運び相談を行う。そこでは「光回線の契約」「タブレットの契約」など、携帯をきっかけに他のサービスに勧誘するチャンスが生まれる。
携帯事業者は近年「金融」や「保険」など、移動体通信事業以外にも積極的に取り組んでいる。これらもショップへユーザーが相談しにきた際にこそ、しっかりとした提案が行えるため、シンプルなプランは通信以外の収益を育てていくチャンスを逃してしまう。
携帯電話はすでに多くの人に普及しており、新たに契約者数を稼いで利益を確保することが難しくなっている。そのため、携帯会社は光回線などの「付帯サービス」を収益源に見込んでいる。
実際、ショップへプランの見直しに行った際に、携帯事業者が展開しているクレジットカードの勧誘を受けるなど、携帯電話とは関係ない案内を受けたことがある人も多いだろう。
筆者自身、携帯電話販売に長年携わってきた一人であり、今も当時の同僚などを通じて現場の様子を定期的に聞いている。「1台の販売」以上に「どれだけ付帯サービスを獲得できたか」の方が販売現場では重要視されていることは経験上知っているし、今も変わっていない。
政府の言う通り、通信料を値下げし事業者同士が健全に競争する環境は必要だが、通信サービスにも原価があり、また一定の収益を確保できなければインフラとして安定したサービスを提供することも難しい。
今回、KDDIが発表したプランが「従来通り」であったのは、囲い込みはもちろんのこと、インフラ事業者として一定の収益を確保していく必要があったのではないだろうか。
KDDIに挽回のチャンスはあるか
昨今は固定回線を引かず、大容量のデータプランでやりくりしている単身者なども増えている。そんな中「家族で」「ネット回線とセットで」という条件付きの割引を前提とした料金の打ち出しが「分かりやすさ」や「純粋な値下げ」に注目しているユーザーの期待の真逆をいき、大きな批判につながったことは間違いない。
一方で、KDDIはこれまで、固定回線のセット割や「スマートフォンで使えるデータ容量が無制限のプラン」に加え、フィーチャーフォンの時代にも「パケット定額制」を他社に先んじて導入した実績がある。
果たして高橋社長が「1月には発表したい」と話す新プランは、他社以上に魅力的なものになるのか。KDDIが今後どのような巻き返しを図っていくかは見逃せない。
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