大腸がんをAIで検出 25万枚の症例画像を学習 国立がん研究センターとNECが開発
大腸の画像をAIで解析し、早期の大腸がんを検出するソフトウェアを国立がん研究センターとNECが開発。AIは早期の大腸がんの画像を25万枚学習している。2020年11月に医療機器承認を取得した。
国立がん研究センターとNECは1月12日、大腸の画像をAIで解析し、早期の大腸がんを検出するソフトウェアを共同開発したと発表した。前がん病変(がんの前段階)と早期の大腸がんの画像を25万枚学習したAIを採用。大腸がんの形状によっては、内視鏡医と同等の診断性能を持つことを検証済みで、2020年11月に医療機器承認を取得した。
名称は「WISE VISION 内視鏡画像解析AI」。同ソフトをインストールした端末などに、内視鏡を接続して使用する。内視鏡検査の際に、医師が患者の大腸をモニターに映すと、AIがその画像をリアルタイムで解析。早期の大腸がんと前がん病変を検出した場合は、その部位に円マークを表示する他、音を発して医師に知らせる。
日本で大腸がんの患者数・死亡者数が増えているが、医師による肉眼での認識が難しく、発症を見落とすケースがあることを踏まえて開発した。ソフトの性能を検証する試験では、大腸がんの症例のうち、視認がしやすい「隆起型」の約95%、視認が難しい「表面型」の約78%を正しく検知できたという。
国立がん研究センターによれば、この結果は「隆起型の診断に対しては、経験豊富な内視鏡医と同程度」という。また、経験の浅い医師が同ソフトを使うと、表面型の検出数が6%向上した。
国立がん研究センターとNECは今後、人間による認識が難しい「平坦・陥凹性病変」の画像もAIに学習させ、解析の精度を高める。将来はCT画像などにも対応し、遠隔での診断を実現するとしている。
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