目指すは“メイドの働き方改革” 「バーチャルメイドカフェ」開発の背景とは(2/2 ページ)
2020年11月にオープンした「バーチャルあっとほぉーむカフェ」。開発の背景にはメイドの働き方や、客層の拡大といった目的があるという。サービス立ち上げの狙いを開発元に聞いた。
2.アニメ・漫画好きの取り込み
2つ目は客層の拡大だ。あっとほぉ〜むカフェの客層はアイドル好きが多く、アニメ・漫画が好きな人は少ないという。しかし、あっとほぉ〜むカフェは秋葉原や大阪の日本橋という、アニメなどを好む人が多い場所で展開している。そのため、こういった層を客として取り込む方法を前々から模索していた。
「以前からメイドカフェとアニメ的な表現を組み合わせたコンテンツを考えていましたが、技術的な理由でなかなか実現できませんでした。しかし、そのタイミングでバーチャルYouTuberがブームになり、3Dモデルを使った技術や表現が一気に普及しました。そこで、客層を広げる施策として、3Dモデルを使ったバーチャルあっとほぉーむカフェが持ち上がりました」
アニメ好きや漫画好きを取り込むため、バーチャルあっとほぉーむカフェでは全ての3Dモデルの見た目を2Dイラスト風にした。“中の人”のメイドも、アニメキャラクターのような声で話す“アニメ声”の人を採用した。
一方で、アニメ好きだけを狙うと女性客やライトユーザーが離れる恐れがあった。そのため、3Dモデルの原案を描くイラストレーターの選出に女性社員の意見を参考にしたり、アニメ声でない話し方のメイドも採用したりして対応しているという。
3.採用の幅を広げる目的も
3つ目は、メイドの採用のしやすさだ。あっとほぉ〜むカフェには月に200人ほどのメイド希望者が集まる。しかし、このうち実際に採用に至るのは多くて15人ほど。深沢さんは採用の基準についてこう話す。
「メイドカフェは接客業。トークがうまい、声がかわいいと思っても、身だしなみや愛嬌が基準に満たず採用できない場合があり、惜しいと感じることもありました。一方で、バーチャルの場合はそういった要素を気にせず、話し方や声が良い人を採用できます」
現実世界での雰囲気を重視しなくていいという理由から、バーチャルあっとほぉーむカフェではメイドの採用をオンラインで行っており、現実世界での顔は一切見ていないという。深沢さんも「バーチャルあっとほぉーむカフェに所属するメイドの(現実世界での)顔はほとんど知らない」という。
2月から価格変更、今後はユーザーの反応探る
バーチャルあっとほぉーむカフェは1月までβ版として提供しており、料金も“お試し価格”として半額にしていた。そのため収益は出ておらず、サービスとしては赤字だった。
しかし2月1日にアップデートを実施し、これまでのサービスに加えてメイドと記念写真を撮影できる機能などを追加。あわせて料金も本来の価格に戻した。今後は新たな価格設定に対するユーザーの反応を確認しつつ、機能の追加を進めていく方針だ。
「これまではバグなども取り切れておらず、半額でないと申し訳ない状態でした。2月1日のアップデート以降は“β2(ベータツー)版”として正規の価格で提供し(ユーザーの動向が)どうなるか見ていくつもりです。年内には正式版をリリースし、メイドと遊べるゲームの種類を増やす他、リピーターに特典を付与する機能なども追加していく考えです」(深沢さん)
コロナ禍で対面でのビジネスが難しい状況が続いている。エンターテインメントやイベントの分野でも試行錯誤が続いているが、バーチャルあっとほぉーむカフェはメイドカフェをバーチャル空間に移しただけでなく、オンラインという条件を生かしてメイド自身の働き方や客層の拡大といった新しい価値を生み出そうとしている好例と言えそうだ。
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