Epic対Apple訴訟に判決 Appleにアプリ内購入の強制禁止命令もEpicは控訴か
Epic Games対Appleの、「Fortnite」のアプリストアからの削除をめぐる裁判の判決が下された。Appleに対し、App Store以外での支払いオプションへの誘導を認めるルール変更を命令した。Apple税に関しては変更を命じなかった。
Epic Games対Appleの、「Fortnite」(フォートナイト)のApp Storeからの削除をめぐる米カリフォルニア州北部地区連邦地裁での裁判が9月10日(現地時間)、終結した。
イボンヌ・ゴンザレス・ロジャーズ判事は、永久的差止命令で、AppleのApp Storeのルールに新たな制限を課した。また、Epicに対しては、Appleとの契約に違反したとして、違反期間中の収益の30%(アップル税に当たる率)の支払いを命じた。およそ350万ドル(約3億8500万円)に上る。
App Storeへの新たな制限とは、App Store登録アプリに、App Store以外での支払いオプションにユーザーを誘導する権利を与えるというもの。ロジャース判事が担当した別の裁判での和解条件と同じだ。
この命令は90日後に有効になる。つまり、12月9日までにAppleは(米国の)App Storeのルールを改定する必要がある。
AppleのいわゆるApple税(アプリの売上の15〜30%の手数料)についてはお咎めなしだ。
Appleはこの判決について、米CNBCなどに送った声明文で「われわれは裁判所の判決に非常に満足しており、これはAppleにとって大きな勝利だと考えている」と語った。
一方、Epicのティム・スウィーニーCEOは「今日の判決は、開発者にとっても消費者にとっても勝利とは言えない。Epicは10億人の消費者を対象に、アプリ内決済方法とアプリストアの公正な競争を求めて戦っている」とツイートし、控訴を匂わせている。
この裁判は、Epicが昨年8月、Appleがガイドラインに違反したFortniteをApp Storeから削除したことを受け、Appleが独禁法に違反しているとして提訴して始まった。Appleも9月、訴訟はEpicが主張するような独禁法の問題ではなく、ガイドライン違反による単なる「窃盗」だとして反訴した。
ロジャース判事は永久的差止命令についての説明文書で、問題になっているのはEpicが主張するようなすべてのiPhoneアプリに関連するのでも、Appleが主張するようなすべてのゲームに関連するものでもなく、「デジタルモバイルゲーミングトランザクション」であるから、「裁判所としては、Appleが連邦あるいは州の独禁法の下で独占者であると結論付けることはできない」としている。
「Appleが55%を超えるかなりの市場シェアと非常に高い利益率を享受していると判断したが、これだけでは独禁法違反を示していない。成功は違法ではない」。
「とはいえ、この裁判は、Appleがカリフォルニア州の競争法の下で反競争的行為を行っていることを示した」。
この判決が出る前に、Appleは別の開発者との集団訴訟で和解した。9月1日にはApp Store登録アプリの中でも、Appleが「リーダー」(reader, 閲覧)アプリと定義するサブスクリプションサービスを提供するアプリの開発者は、課金を自社Webサイトで行えるようにすると発表している。後者は日本の公正取引委員会との合意によるものだが、日本だけでなく、世界で実施する。
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