PayPayの店舗手数料有料化で“加盟店の離脱”は起きない モバイル決済ジャーナリストが予想する理由(2/2 ページ)
PayPayが10月に加盟店のシステム利用手数料を有料化する。先行事例も踏まえると、有料化による加盟店の離脱はそれほど起きないと考えられる。一方、PayPayが手数料を2%弱に設定したことで、競合他社は決済手数料でもうける戦略をとりにくくなるだろう。
「コード決済はキャンペーン頼み」は本当か?
PayPayといえば、18年のデビュー時に行われた「100億円あげちゃうキャンペーン」が痛烈なインパクトを与え、同社の名前を聞くといまだにこれを思い出す人も少なくないだろう。以後も同社は定期的にキャンペーンを打ち出しており、他社も追随する形でキャンペーンを出すようになり「コード決済といえば大規模な還元キャンペーン」という流れを定着させるに至った。
先日、21年3月のコード決済の取扱額が電子マネーのそれを抜いたという報道があったが、決済回数はともかく、金額面では両者の逆転現象が起き始めている。電子マネーの中核の1つであるSuicaをはじめとした交通系ICの利用が、コロナ禍で減少したことに連動した動きでもあるが、実際にはいくつかの事情が絡んだ動きとなっている。
まず前提として、電子マネーそのものの利用が減少したというわけではなく、利用自体は「停滞傾向」にあるという表現が正しい。過去数年を通じてクレジットカードを含むキャッシュレス決済の利用は伸び続けているが、電子マネーに関しては過去1年間でほぼ横ばいの水準にある。Suicaについては利用が1年間で1割以上減少しているが、そのぶんを他の電子マネーの伸びが支えた構図だ。また店舗によっては「交通系ICの利用が特に減少したというデータが見られない」という話も聞いており、地域差がかなり反映されているとみられる。一部ではコード決済が電子マネーの取り扱い分を浸食した可能性も考えられるが、トータルとして電子マネー利用が減ったわけではない点に注意したい。
また「コード決済の伸びはキャンペーンのたまもの」という表現もある意味で正しい。定量的なデータは各社から直接発表されていないが、複数の加盟店や内部情報などを吟味する限り、キャンペーンの有無でコード決済の利用は大きく増減する。例えばd払いがキャンペーンをやればその期間はシェアが増大するし、au PAYがキャンペーンをすれば今度はこちらのシェアが増大する。
3月にコード決済の取扱額が増大したのも、コード決済における3分の2のシェアを持つPayPayが「超PayPay祭!フィナーレジャンボ」を実施した効果が大きいと考えられる。
コード決済全体が右肩上がりで上昇を続けているのは確かで、キャンペーンを通じてユーザーの消費行動が喚起され、日常使いでの定着を促している。PayPayによれば、以前までは同社の持ち出しというケースがほとんどだったというが、最近のキャンペーンは加盟店側が客効果への期待で自ら出資する場合や、自治体などが地元での消費を促すための地域通貨の代わりにコード決済を活用するケースが増えているようだ。
結論としては、今後もコード決済のキャンペーンは続いていくと考えられる。以前までであればコード決済の事業者が自身のサービスを盛り上げるために実施していたものが、現在ではどちらかといえばプラットフォームとして加盟店や組織などが活用する形で展開する形式へとなり、その性格が変化しつつある。PayPay馬場氏の発言にのっとれば「コード決済のプラットフォーム化」が、キャンペーンを通じて現れているにすぎない。おそらく、PayPayを「コード決済のサービス」と考えていると、その本質を見誤る可能性が高い。
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