「人事に丸投げではクラウド人材育成は進まない」──AWSジャパンが危機感 包括的な育成支援サービス提供へ
「人事部門に丸投げではクラウド人材育成は進まない」──AWSジャパンが日本のクラウド人材育成に危機感をあらわに。経営陣の理解不足を補うサービスとして、人材育成に向けた計画立案や学習コンテンツの調達などを包括的に支援するサービスを提供する。
「人材育成に関する市場変化について、経営陣がキャッチアップできていない。人事部門に丸投げではクラウド人材育成は進まない」──アマゾンウェブサービスジャパン(AWSジャパン)の岩田健一さん(トレーニングサービス本部長)は4月11日、新サービスの発表会で日本のクラウド人材育成に対する危機感をあらわにした。
AWSジャパンは同日、育成の計画立案や学習コンテンツの調達などを包括的に支援するサービス「AWS Skills Guild」の提供を発表。新サービス提供の背景には、経営陣の理解不足によって人材の育成が進んでいない現状があるという。
デジタル人材育成の需給に差、経営陣の理解不足も
AWS Skills Guildは、すでにオーストラリアなどで提供している人材育成の支援サービスだ。AWSジャパンが顧客組織の経営陣と協議し、ビジネス課題の解決に必要な技術を精査。結果に基づいた育成計画の立案を支援する他、計画に則した学習コンテンツを提供する。
学習コンテンツはAWSジャパンが既に提供している教材などから調達する他、新たに開発する場合もあるという。全社的にクラウド活用を推進したい企業などの利用を見込むことから、要望があれば育成を担当する組織の立ち上げ支援などにも協力する。
AWS Skills Guildの提供を日本でも始める理由はいくつかある。一つは、日本ではデジタル人材育成の需要が大きいにもかかわらず、実施に踏み切っている企業が少ないことだ。
AWSジャパンが外部と協力して2021年8月に実施した調査によれば、日本の組織は全体の約98%が従業員にデジタルスキルの訓練が必要と考えているにもかかわらず、実際に訓練の計画を策定しているのはおよそ18%だったという。
これは同時に調査したインド、オーストラリア、韓国など7カ国の中で最低の数値だった。ニーズと実際に訓練を行っている企業の割合の差も最大だったことから、日本では計画立案を含めた包括的な支援サービスの需要があると見込んだ。
もう一つは、クラウド人材の必要性に対する経営陣の理解不足だ。
AWSジャパンではこれまで、非IT人材向けにAWSの基礎知識を教える無償のウェビナー「AWSome Day」やeラーニング「AWS Skill Builder」、AWSの認定資格とその試験など、学習用のコンテンツやサービスを複数提供してきた。
しかし勉強したい人だけに個別で学習の機会を提供する形だと、いっとき勉強してもその後のアップデートに追い付けないケースがあった。全社的にクラウド人材の育成に注力している企業でない場合、勉強したい人が業務時間外に教材を使って学習せざるを得ず、忙しくなると結局知識を身に付けきれない場合もあったという。
一方、AWS Skills Guildは経営陣と協議の上で育成の計画立案から支援でき、継続的に学習したい需要への対応も可能としている。経営陣にクラウド人材の育成に全社を挙げて取り組むよう促し、従業員により良い環境で学習してもらえることから、包括的な育成支援サービスの提供を決めたという。
同社の長崎忠雄社長は「AWSはDX促進に向け、経営リーダーに“人への投資”を訴える」と意気込む。
「スイスの国際経営開発研究所による2021年の発表でも、日本のデジタルの競争力は64カ国中28位で、前年よりランクが一つ下がっている。現状はマイナスからのスタートと言わざるを得ない。まずは基礎への投資が何よりも重要になっているのではないか」(同)
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