機能表よりも世界観のほうが大切だ マネーフォワード クラウド会計 vs. freee会計(後編):クラウド会計SaaS対決(3/5 ページ)
クラウド会計という分野では必ず比較されるMFクラウドとfreeeであるが、「会計ソフト」という言葉で一括りにすることができないほど、思想や世界観は異なっている。本稿では両者の機能比較に加えて、その背景にある思想やターゲットなどをひも解いていく。
海外SaaSのようなアプリストアも展開
freeeは初期からAPIを公開しており、近年はfreeeアプリストアという形で100を超える連携アプリが並んでいる。多くの会計ソフトが自社で開発した別製品との連携を優先し、他社製品との連携を排除してきたのとは対照的に、Salesforceなどの海外SaaSのようにオープンなプラットフォームを築いているのがfreeeの2つ目の特徴だ。
freeeと連携しているアプリは主に3つに分類できる。1つ目は、面倒な入力処理や会計処理を補助するアプリだ。こちらの領域はfreee社が開発して提供しているものが多く、「前受/前払アプリ」が代表的なものの1つである。
例えば月額利用料金1万円のサービスを提供している企業が、1年分12万円を一括で請求した場合、これらは前受金としていったん登録されるが、月次での正確な収益把握のために追加処理として12万円を毎月1万円ずつに分割して振り分けなければならない。そのためには12個の振替処理を登録する必要があり、非常に手間がかかっていた。このアプリは期間と回数を指定すれば、振替処理の登録を一括で行ってくれるもので、前受金や前払金が頻繁に発生する企業では重宝されている。
2つ目は、freeeの前工程である営業管理領域のアプリで、代表格はSFAの雄・Salesforceだ。ビジネスの規模や複雑性が増すにつれて、受注するまでのプロセスを記録し、コントロールするシステムが必須になってくる。SFAは請求書を発行する前工程を管理し、freeeには請求書を発行する機能があるため、これらを連携することで商談開始から受注確定、さらには請求書発行までをスムーズに対応することが可能になる。
営業担当者が増え複数の商談が同時並行的に進むようになると、SFAが必要になってくる。freeeの請求書発行機能は非常に簡易的な機能であり、スモールビジネスであれば必要十分であるが、SFAを導入する規模では機能不足であるため、連携アプリを使ってシームレスに連携することで業務は大幅に効率化するのである。
3つ目は、freeeの後工程である会計データを加工するアプリだ。予実管理やNPOなどの特殊な報告様式への変換など、freeeで作成した会計データをAPIで連携することでさまざまな用途に対応している。
ここでは連結決算のためのアプリ「結 -YUI-」(以下「YUI」)を紹介したい。連結決算のためのソフトはこれまでもあったが、旧式のUIのものが多く、インストール型であったため、SaaS化が待ち望まれていた。YUIは完全にfreeeに特化したクラウド型の連結決算ソフトであり、連結する企業群が全てfreeeで会計処理をしていれば(freee以外の会計ソフトの場合はCSVでアップロード)シームレスに連携対応が可能になる。
監修している税理士法人つばめは、freee専門であることを明示するために事務所の名称をfreeeのロゴに使われている「つばめ」にするぐらい筋金入りfreee専門の税理士事務所だ。財務諸表の単純連結機能はもちろんのこと、これまでアナログな対応が多かった連結処理の際に必要なさまざまな調整やチェック業務を、非常に簡単に処理できる機能を多く実装している。まだ完璧とは言えないまでも、YUIによってCSVデータをダウンロードしてExcelによる計算や加工を行う業務が減少し、大幅に連結決算の実務が効率化する未来はすぐそこまできている。
スマホにさまざまなアプリをインストールするのと同じように、freeeもさまざまなアプリと連携をすることで業務は大幅に効率化され、どんどん便利になっていく。freeeは早くからAPIを公開しており、開発者向けのサイトやサポートも充実しているため、各種の業務系SaaSが自らfreeeと連携するアプリケーションを開発し、公開している。会計ソフトで唯一のオープンなプラットフォームといえるだろう。
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