機能表よりも世界観のほうが大切だ マネーフォワード クラウド会計 vs. freee会計(後編):クラウド会計SaaS対決(4/5 ページ)
クラウド会計という分野では必ず比較されるMFクラウドとfreeeであるが、「会計ソフト」という言葉で一括りにすることができないほど、思想や世界観は異なっている。本稿では両者の機能比較に加えて、その背景にある思想やターゲットなどをひも解いていく。
それぞれのSaaSが向いている企業
MFクラウドが向いている企業
MFクラウドの強みは、既存の経理業務の流れを大きく変えずにクラウド化できることだ。中小企業のための会計ソフトとして必要十分な機能は備えており、かつ、請求書や給与計算、経費精算などのバックオフィスに必要な各サービスもワンパケージとして提供されているため、社内で使っているバックオフィス系のツールを一気に入れ替えることもできる。
経理の方々にとってはデータを移行すれば即座に使い始められる馴染みのあるUIであり、ベテランの方も安心感がある。その上、領収書の添付や銀行・クレジットカードの明細データの連携など、デジタル化によって社内業務を効率化することもできる。また、税理士にとっても使い勝手は良く、これまで通りの記帳代行や税務申告の流れを踏襲できる。
導入のハードルが低く、即座にデジタル化による恩恵を受けられるのがMFクラウドであり、まだまだアナログな業務が多い業界や地方企業などと相性が良い。
freeeが向いている企業
freeeの強みは、経理だけでなく業務プロセス全体をデジタル化できることだ。逆にいえば経理の一存で導入することは難しく、受注管理や請求書発行、費用の計上などの関連する業務を含めて全体の流れを可視化し、再構築しなければ効果は出ない。独自の入力方式を採用していため経理に敬遠されやすいことに加えて、これらの導入プロジェクトは経理や税理士が担ってきた業務範囲を逸脱する部分も多いため、導入までのハードルが高い。
一方で、「取引」形式は一度理解してしまえば、発生・決済の対応関係が非常に管理しやすくなり、freeeに慣れていくと普通の会計ソフトが物足りなく感じてしまうのも事実だ。特に前受金・前払金の振替処理を「取引」の枠組みの中で行うことができる「+更新」機能などはfreeeでなければ利用することができないため、大きな魅力になっている。既存の会計ソフトの枠組みを壊したことで、アンチfreeeを生み出した一方で、多くのfreeeファンも発生し、着実にユーザーを伸ばしている。
導入のハードルはやや高めであるが、アナログな処理が少ないIT企業や都市圏の企業と相性が良い。
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