スローでイージーな低速モビリティで見直す”移動”の可能性:プラマイデジタル(2/2 ページ)
人間が歩く速度と同じくらいゆっくり移動する低速モビリティがある。主に観光業への利用を目的に開発が進められている。パナソニックやホンダ、トヨタなどが開発を進める車両を紹介する。
街の回遊性と価値を高める機能として注目
低速モビリティを人の移動をサポートするだけでなく、移動そのものを楽しくしたり、街の回遊性を高めたりすることに取り組む会社も登場している。
「時速5kmで自動走行するモビリティサービス」を提案するゲキダンイイノ(大阪府大阪市)は、どこでも乗り降りできる“HOP ON HOP OFF”スタイルの自動運転車両「iino」を開発しており、ソファや畳を搭載したタイプや、ディナーやヘッドスパができるサービスなど、ユニークな移動体験をトータルに開発している。
先日、兵庫県にある神戸ウォーターフロントでは、海沿いの歩行エリアを自動走行するiinoを運用し、人を回遊させる実証実験が行われた。停留所や時刻表は設けられず、スペースが空いていれば自由に乗り降りできるようにしており、いわばオンデマンドで設置された”動く歩道”のようなものだ。乗り物とは異なるため利用料も無料にしている。
そのため乗車賃にあたる収益をどうするかを検証している。今回はルート沿いに飲食スポットやストリートファニチャーを設けたり、夜は夜景を楽しむ有料のパーティーカーとして走らせたり、ポップコーンの移動セルフ販売などを試していた。
モビリティの検証というと乗車人数をカウントするものだが、今回の実証実験では車両に搭載したセンサーで人流を測定し、にぎわいを創出できるかを分析。3日間の実施だったがかなり手応えが得られたようだ。
このようにモビリティは人の動きを変える力があり、スローなライフスタイルを取り戻そうとしている欧米の都市では、低速モビリティを街の中心機能にしようという動きもある。
日本でもスマートシティー計画において街をデザインする重要な機能として位置付けられており、2023年4月にレベル4が解禁される自動運転車と組み合わせた運用も提案されている。それにあわせた新しい車両のアイデアもこれからまだいろいろ出てきそうなので、機会があればまた紹介したい。
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