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AIの“カンブリア爆発期”? 2022年を編集長と振り返る この先、AIはどう進化するのか考えた

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 2022年の夏、“世界変革”が起きた。高精度の画像生成AI「Stable Diffusion」がオープンソースとして公開されたのだ。国内ではネットユーザーが投稿した記事がインターネットにさざ波を起こし、それはすぐ大きなうねりになった。AIの景色が一変したと多くの人が感じたのではないか。

 AIの進化はいまに始まったことではない。しかしさまざまな変化が立て続けに起きた22年は、転換点の一つになるだろう。AIの話題が絶えることはなく、ITmedia NEWSでも記事に取り上げてきた。

 22年が終わろうとしているいま、編集部内でこの一年を振り返ってみた。参加したのは次の3人だ。

キーチITmedia NEWS編集部の編集長。自作PCから量子コンピュータまで最新ITに造詣が深い。

ツキーAI専門コーナー「AI+」を担当。トレンドを追わせたら右に出る者はいない。

オカ企業の取材などを手掛ける若手記者。ビジネス視点を武器にする。


画像生成AIの“カンブリア爆発期”? 2022年を振り返る

オカ 22年はAIの話題に事欠かなかった印象があります。新しい情報が次々に出てきて、話題を追い切れないほどでした。

ツキー 何と言ってもすごかったのは画像生成AIですね。米AI研究企業OpenAIが4月に公開した「DALL・E 2」はクオリティーの高さからTwitter上で「最新のAIやばすぎる」といった声が上がりました。ただ一部の人しか使えず、広く普及するには至りませんでした。

 一般向けの高精度な画像生成AIとして7月に登場したのが「Midjourney」です。「1分で神絵を生成できる」と話題になりましたね。多くの人が実際に画像を生成して驚きつつ楽しんでいる中、彗星(すい星)のごとく現れたのが「Stable Diffusion」でした。

オカ それまで静かだった画像生成AIの分野が急激に進化したのって、現代の“カンブリア爆発”みたいですね。

キーチ 私もいろいろなAIを試しました。Midjourneyのすごさに驚きつつも抵抗感がありましたね。というのもMidjourneyは月額課金制なんですよ。一方でStable Diffusionはオープンソースだったので、自分のPCにダウンロードして実行できるのが“古のオタク”的に良かったかなあ(笑)。

 それにある程度のスペックのPCがあればクラウドより速く処理できます。実際、私の手元でも1枚数秒で生成できたし、ローカル環境で実行できる安心感みたいなものがありました。

ツキー あとはオープンソースなので、派生サービスが登場したのも特徴的ですよね。LINEに組み込んでお絵かきAIチャットbotを作った人がいたり、2次元絵に特化したサービスが登場したり、個人のエンジニアがさまざまな「お試しサイト」を立ち上げるなど展開の早さに驚きました。

キーチ 気になるのは、こういうのってサーバ側のリソースをどうしているのかなってところ。AI画像生成って大量のタスクを実行するので当然データ量も膨大になる。それを処理するとなると計算量は相当なので、サービス利用者を待たせないための工夫がいるだろうなと。特に企業が参入する場合は、自社でサーバを用意するといった対応が必要ですね。

オカ 実際、企業も注目していますよね。Stable Diffusionは商用利用もできるので、米Adobeが「Photoshop」のプラグインに取り入れたり、日本でもセルシスがペイントソフト「CLIP STUDIO PAINT」に作画補助機能として試験導入したりするニュースがありました。

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※画像生成AIのイメージ

バズワードでは終わらない AIが伸びたわけ

ツキー 画像生成AI以外だと、自然言語処理の技術も精度が向上していますよね。

キーチ 私は自分でプログラムを書くのですが、面白いと思ったのはGitHubのAIプログラミング機能「GitHub Copilot」ですね。コメントで関数の内容を書くとプログラムコードを自動で作ってくれるんです。

オカ なんかもう人間いらないですね。

キーチ いえ、AIはあくまでも補助的な役割に落ち着くと思います。Copilot=副操縦士という名前の通り、メインの機長が人間なのは変わらないでしょう。

ツキー 画像生成AIも自然言語処理も急にドッと登場したにもかかわらず、ただのバズワードで終わってないですよね。実用的な活用例が広がっているし、まだまだその機運が高まり続けている気がします。

キーチ 急激に大規模AIモデルやAIサービスが増えた理由は、ハードウェアとソフトウェア、そしてユーザーという3要素が関係しているのではと考えています。まずハードウェアについては、GPUの進化が貢献しているのは間違いないです。AIに的を絞ったGPUサーバが登場するなど今後も伸びる領域でしょう。

 特に、画像生成AIのような大規模モデルの場合、大量のデータセットを読み込んで学習するので膨大なメモリが必要になります。そこでGPUメモリが不足すると、そもそも深層学習そのものが出来なくなるので、GPUメモリの大容量化は一つの方向性になるでしょう。

 次にソフトウェアについて。従来は2つのニューラルネットワークを競わせることで、AIモデルの精度を高める手法「敵対的生成ネットワーク」(GAN)が有名でした。ところが最近の画像生成AIは全く別の手法を使っているんです。「拡散モデル」(Denoising Diffusion Probabilistic Model)というもので、端的に言うときれいな画像にノイズを掛けていき、今度は全くのノイズ状態から元の画像に戻すという作業を通して学習していくものです。これがブレークスルーになったといえます。

 そして、多くの人が実行できるようになってユーザー数が増えたことがAIサービスの増加につながっていると見ています。みんな「自分でも使える!」と分かったんですよね。

オカ 使ったら便利だし楽しいですもんね(笑)。

AIに期待すること 1位は業務効率化 読者調査から

オカ 実際にAIへの期待は高いと思います。ここまでは画像生成AIの話がメインでしたけど、アイティメディアがデル・テクノロジーズと共同で実施した読者アンケート調査(※)では、勤め先でAIを「導入している」「導入を検討している」と答えた人は回答者の約44%で、「導入予定はない」を上回っています。

※実施した調査は「AIのビジネス活用に関する読者調査」。調査期間は22年11月8日〜11月22日で、回答数は合計277件だった。

ツキー 「AIで解決したい課題、期待すること」という設問では、業務効率化への期待が回答者の70%超えで圧倒的ですね。Stable Diffusionがバズったときも「イラストレーターの仕事を奪う」といった否定的な意見の他に、「複雑な背景イラストはAIに任せれば楽」という声があったのを思い出しました。

キーチ 実際の業務に関する効率化の話はネットで話題になりづらい印象ですね。効率化したら競合優位に立てるので、表には出さない気がします。でも調査結果を見ると、ここに課題感を持っているのは明白ですね。

オカ その次に期待を寄せるのが「意思決定のサポート」です。サポートというのが重要で、データやAIの示す結果を基に、事業をどうするか考えるのが人間の役目なので、うまく付き合う必要がありますね。

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AIで解決したい課題や期待すること(クリックで画像拡大)

オカ AIを導入済みの人に聞くと、活用先は「データ分析」なんですよ。課題感で挙がった内容と一致していますね。

ツキー AIを活用している人が、どんなコンピューティング環境を使っているかも気になります。アンケート結果では順に「サーバ」(約19%)、「SaaS型ツール」(約18%)、「デスクトップPC」(約16%)ですね。用途と性能のバランスを取った結果かもしれません。

オカ サーバと答えた人の内訳を見ると「GPU搭載ラック型サーバ」が約10%、「GPU搭載タワー型サーバ」が約3%で合わせて13%がGPUサーバを使っていました。

キーチ これ、「GPU非搭載サーバ」以外のPCやクラウドにもGPUを搭載しているのでは? そうなるとグラフの見方が変わってきます。ただ気を付けたいのはGPUが全てではない点です。深層学習にはGPUが適していますが、統計的な計算はCPUが得意といった向き不向きがあります。AIで何をするのか、どの計算をどのコンピュータで実行するのか考える必要があります。

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AI用途のコンピューティング環境(クリックで拡大)

AIを導入しない理由 「人も資金もない」

オカ 反対に、AIを導入していない人にその理由を聞いた結果がこちらです。1位は「AIの知見がある人材や組織がない」(54.2%)でした。

ツキー 納得の1位ですね。AI人材やデータサイエンティストは取り合いになっているし、新しいツールやテクノロジーを取り入れるのにその知見が必要ですもんね。

キーチ いまは普通のビジネスパーソンでも使えるAIソリューションも登場しているので、それを活用するのも一つの手です。あとこの結果から分かるのは、人も資金もないから内製化も外注もできないという現状ですね。そうした企業でもAI活用をサポートしてくれる機会があるなら、検討する余地があるでしょう。このアンケートを実施したデル・テクノロジーズもAI活用の支援をしていたはずです。

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現時点でAIを導入していない理由(クリックで画像拡大)

オカ ですね、AIを使いたい企業とAIベンダーをマッチングするプロジェクト「Dell de AI “デル邂逅(であい)”プログラム」を進めています。Dell de AIパートナー数十社が提供するAIソリューションやサービスの中から、自社の課題感や業務ニーズに合ったものを紹介してもらえるので、多くの企業の役に立ちそうです。AI活用の基礎をまとめたPDF冊子「Dell de AI “デル邂逅(であい)”マスターハンドブック」を、私もこっそり読んで知識を吸収しているのは内緒です(笑)。

ツキー きちんと“出会い”がありそうな名前だ……。

オカ 他にもデル・テクノロジーズでは、AIを導入する前にモデルの精度やGPUサーバの性能を検証できる無料の専門施設「AI Experience Zone」を都内に開設しています。リモートでも検証できるらしく、私も試してみたいと思っています。

キーチ 有用そうですよね。検証環境を作るにもお金が掛かるので、それを無料で試せるなら便利なのでは。

AIが進化する方向 少ない計算資源で成果を出すように

オカ だいぶ時間が過ぎたのでそろそろ切り上げますか。ちなみに、編集長キーチさん的には今後AIはどうなると思いますか?

キーチ 当然進化を続けるでしょう。そこでAIのアルゴリズムが目指すのは、できるだけ計算能力を使わないようにすることです。たくさんの計算能力を使ってすごいことができるのは当たり前です。囲碁AI「AlphaGo」を作った英DeepMindも、AIを改良する中で「いかに計算資源を減らして、元と同等かそれ以上の成果を出せるか」が大切と言っていたように記憶しています。

 じゃあ高性能なGPUは不要かというとそうではなく、少ない計算資源で成果を出せるなら、もっと多くの計算資源でさらにすごいことを実現できます。今後もAIとハードウェア双方の発展に期待です。

ツキー AIコーナー担当者からすると、数カ月で画像生成AIがここまで伸びるとは思っておらず、23年がどうなるのか未知数です。それによってユーザーのニーズは変わるし、企業の動向も変わります。そうした最新情報をしっかり追いたいですね。

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提供:デル・テクノロジーズ株式会社
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