「エンジニア雇いたい」→「ゲーム実況しようぜ」 “どうしてそうなった”なSmartHRの採用活動、成果は?(1/2 ページ)
ITエンジニアの採用に向け、なぜかゲーム実況に取り組むSmartHR。“どうしてそうなった”な採用活動の詳細を人事・エンジニアのキーパーソンに聞く。
YouTuberなど配信者・インフルエンサーの定番コンテンツとして人気を集めるゲーム実況配信。この人気を、ITエンジニアの採用に役立てようとしている組織がある。人事労務ツールを提供するSmartHRだ。
同社はエンジニア・人事共同の取り組みとして、6月ごろから不定期にエンジニアの採用を目的としたゲーム実況動画を配信している。プレイするゲームは、相手を蹴落とすバトルロイヤル「Fall Guys」や、多忙な協力して料理を完成させるパーティーゲーム「Overcoocked! 2」などさまざまだ。
SmartHRのゲーム実況は、エンジニアの採用に当たって効果を上げているのか。そもそもなぜ採用を目的にゲーム実況をしようと思ったのか。詳細を取り組みのキーパーソンに聞いた。SmartHRがゲーム実況を始めた背景には、ARR(年間定期収益)が45億円を突破(2021年時点)し、SaaS企業として名を上げつつある同社ならではの悩みがあるという。
「エンジニアがゲームしながら質問にこたえる枠」 すでに4回配信
SmartHRのゲーム配信は、同社の雑司ヶ谷雄太さん(プロダクトエンジニア)が人事に持ち掛けて実現した企画という。タイトルは「エンジニアがゲームしながら質問にこたえる枠」。6月から12月にかけて、すでにYouTubeで4回に渡って配信している。
内容はタイトル通りで、YouTubeのコメント欄に来た質問に、ゲームをしながら答えるというもの。ただし「いかなる状況においても組織の話を続けなければいけない」というルールがあるので、質問だけでなく雑談も仕事の話をする決まりだ。メンバーはプレイヤー4人と、司会・タイムキーパーなどを務める「天の声」役1人。いずれも社内のエンジニアだ。
遊ぶゲームは画面の見やすさ、展開のメリハリ、プレイしながら質問に回答しやすいかを基準に選定。ゲーミングPCがないメンバーもいたので、PC・ゲームコンソールを跨いだ「クロスプレイ」が可能かどうかも基準になった。結果、初回に採用した横スクロール型対戦アクション「Ultimate Chicken Horse」、2回目のOvercoocked! 2を経て、3・4回目はFall Guysに落ち着いたという。
実際に質問も来ており「本日のお昼ごはんは?」といったカジュアルなものをはじめ「採用面接ではどんなところを見ているか」「残業の有無は」といったコメントもあったという。
配信に当たっては、同時接続数や、映像のアーカイブの視聴数といったデータも集計している。1〜3回目については、回を重ねるごとに同時接続数やアーカイブの再生時間は減っていたものの、平均再生時間は増加した。
12月19日に配信した4回目は公式ブログで告知をしたこともあってか、同時接続数も増えたという。正確な数値は公開していないものの、同社の南石愛実さん(採用広報)は「恐らく質問は4回目が一番たくさん来た。社員もたくさんしゃべった」としている。
「エンジニア組織に存在感」「面談で言及」 一定の効果も
取り組みの結果、定量的な成果は出ていないものの、一定の効果も体感できているという。「カジュアル面談に来る候補者の中には、資料だけでは伝わらない生の雰囲気を求めて、配信を見てから来る人もいる。『すごくわちゃわちゃしていて、エンジニア組織も仲がよさそう』といってもらえることもあった」(雑司ヶ谷さん)
社外だけでなく社内にも影響があった。事業部門を中心に社員数が増える中、エンジニア組織の存在感を示す効果が出たという。
「エンジニアのプレゼンス向上に貢献している。人数比でみると、SmartHRは全体の1割ちょっとしかエンジニアがいない。ビジネスサイドのメンバーが増える中、エンジニアはそこまでのスピードで採用ができていないので、大人しくしていると認知されなくなってしまう。配信を始めてからは『何かエンジニア面白いことしてますね』といってもらえるようになった」(雑司ヶ谷さん)
「社内外でSmartHRのイメージに差」 ゲーム実況の理由は
ゲーム配信により、社内での存在感を高めたり、組織のありのままの姿を伝えたりすることに成功したSmartHR。そもそも、雑司ヶ谷さんはなぜゲーム実況をしようと考えたのか。背景にはいくつかの理由があった。
関連記事
- サイボウズ、“メモリ8GB”の社用PCを撤廃していた 全て16GB以上に エンジニア以外も
サイボウズが、社員に支給する社用PCのリストを春に更新し、8GBのメモリを搭載するマシンを外していたことを明かした。不定期なリスト更新によるもので、現在はエンジニア以外が利用するものを含め、全てのPCが16GB以上のメモリを搭載しているという。 - 「ITエンジニアがヤバいくらい本を買うようになった」──SaaS企業が書籍購入制度にメス、利用数14倍に 何を変えた?
書籍購入制度の変更により、ITエンジニアによる本の購入が「ヤバいくらい増えた」というSaaS企業。社員の意欲を高めるに当たり、どんな制度変更をしたのか。 - SaaS企業が恐れる「解約率」との正しい向き合い方 継続率99%を超えるSmartHRに聞く
月次の解約率を継続して1%未満に抑えるSmartHR。サービス開始時点では2〜3%程度だったにもかかわらず、数値を抑えられた理由とは。CEOに戦略を聞く。 - 人事ワードでタイピングゲーム、SmartHRが開発 「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」などをひたすら打つ
人事労務ツールを提供するSmartHRは、タイピングゲーム「人労打」を公開した。「終身雇用」や「労働条件通知書」「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」など人事・労務業務に関するワードを出題する。 - 「個人に数値目標を定めない」がSaaS解約率を抑えるカギに 継続率99%以上のSmartHRに聞くカスタマーサクセス戦略
月3%未満を維持すべきといわれるSaaSビジネスの指標「解約率」を1%以下に維持するSmartHR。組織が急拡大し、試行錯誤が続いているにもかかわらず解約率を抑えられる背景には「個人に数値目標を定めない」などの工夫が隠れていた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.