AI契約レビューの未来はどうなる? 業界トップ、LegalOn Technologies社長が目指すもの(4/4 ページ)
AI契約レビューSaaSを提供するLegalOn Technologiesの角田望社長に、同社創業の経緯からAI契約レビューの未来まで、考えを聞いた。
AIレビューの未来は
AI契約書レビューサービス「LegalForce」は企業法務や弁護士のニーズに合致し、利用者を続々と増やしている。一方で、社会的に認知されるとともに課題も浮き彫りになってきた。弁護士以外の法律業務を禁じた弁護士法72条だ。
匿名の企業が経産省のグレーゾーン解消制度にはかったところ、AIを使った契約レビューについて「弁護士法第72条に違反すると評価される可能性がある」という法務省からの回答が公表されたのだ。
これを契機にAI契約書レビューサービスを提供する各社は「AI・契約レビューテクノロジー協会」を設立。内閣府のワーキンググループなどを介して、理解促進に努めている。LegalOn Technologiesを含む協会の見解は「AIが正確に契約書をレビューするという技術は実用化されておらず、人間の弁護士が行うレビューとは根本的に異なる」というものだ(記事参照)。
では、AI契約書レビューサービスは将来どこに向かうのだろうか。
「AIは基本的にツール。人間が意思決定をするために必要な情報の整理や収集を支援し、質と生産性を両立させるためのツールだ」と角田氏は言う。仕組み化、定型化できるところはテクノロジーにフィットするが、人の強さは汎用性と意思決定ができることだ。
「人にしかできない部分とそうでない部分があり、そこに役割分担が発生する。前段階となるAIによる契約書レビュー、文案の作成のサジェストなどはどんどん発達するだろう。ただし最終的な判断は人にしかできない」
例えば契約書で損害賠償請求について書かれた条項に上限金額を入れるかどうか。これはAIが判断できるものではなく、法的な意思決定を移譲されている法務部、法務担当者が判断すべき項目だ。
「法務担当にとって、AIが自分や部下を代替できるのかという目線で見ると、捉え方としては不正確だ。AIをいかに使いこなしてパフォーマンスを上げていくかが、ソフトウェアに対する向き合い方だと思う」
角田氏のスタンスは、AIはあくまで人の意思決定を補助するツールだというものだ。そのために、精度を向上させることがAI契約書レビューの直近の未来だという。
「精度という意味では完成度はまだ3割程度。もっともっと便利にしていくことで、法務をより強力にサポートしていきたい。その文脈でAI技術を活用していく」
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