「リスキリング」ってどういう意味? リスもゲームも無関係 DX・AI化と深い関わり 岸田発言で物議(1/2 ページ)
産休・育休中の「リスキリング」を後押しする――1月27日、岸田文雄首相が国会の答弁で行ったこんな趣旨の発言が物議をかもしている。
産休・育休中の「リスキリング」を後押しする――1月27日、岸田文雄首相が国会の答弁で行ったこんな趣旨の発言が物議をかもしている。
「リスキリング」という言葉。このニュースで初めて知った読者も多いのではないか。筆者もその一人として「動物のリスの、虐殺……?」などと思っていた。
「国会で物騒なことを言っているなあとびっくりした」――FPSゲームファンからはこんな反応もあった。FPSで「リスキル」といえば、「リスポーン地点(敵の復活地点)で敵をキルする(倒す)こと」(リスポーンキル)なのだ。
リスキリング=学び直し? DXと深い関わり
今回、話題になったリスキリングは、動物のリスともゲームとも無関係だ。
リスキリングは英語で「reskilling」。re=再び、skilling=スキルをつける、という意味で、リス・キリングではなく、リ・スキリングだ。日本語では「学び直し」と訳されることも多い。学び直しといっても、一般教養などではなく、「仕事のための」スキルを新たに学ぶことを指す。
英和辞典「英二郎 on the WEB」による訳は「〔失業者向けの〕技能再教育」。ケンブリッジ ビジネス英語辞典では「違う仕事ができるよう、新しいスキルを習得するプロセス。または、別の仕事をするように人々を訓練するプロセス」(the process of learning new skills so you can do a different job, or of training people to do a different job)と定義されている。
ポイントは、新しいスキルを習得する、という点。既存のスキルをさらに熟練させる「upskill」と異なり、新しいスキルを学び、従来とは異なる職業や職種にも就けるようにする、というイメージだ。
発祥は米AT&Tか Amazonも大規模投資
DX化の進行とともに、働き方が劇的に変わってきている。AIの発達も著しく、既存の仕事の一部がなくなって失業者が出たり、より高度なスキルを持つ人材が不足すると予想されている。
リスキリングは、そのような変化に対応するための手段だ。企業が従業員の学び直しを支援したり、個人が自ら新たなスキルを学び直すことで、新しい環境に適応したスキルを身につけ、仕事・雇用を維持したり、生産性を向上させる、といった意味で使われる。
先駆者としてよく挙がるのは米AT&Tだ。1800年代に電話事業者として創業したが、その後、ネット通信回線大手となり、100年以上の歴史をつないでいる。
CNBCの記事(2018年3月付)によると、同社は08年当時、25万人の従業員のうち「半数は会社の将来に必要なスキルを持っていない。10万人は、10年後には存在しないであろうハード関連のスキルしかない」 と推定。従業員に将来必要なスキルを学んでもらうため、10億ドルをかけて研修やオンラインコース、大学との連携プログラムなどに投資し、再教育を進めてきたという。
「同社はこれを『リスキリング』と呼ぶことを好んでいる」(the company prefers to call it “reskilling” )と、リスキリングをカッコ付けで表記している。必要なスキルが転換する時、新しいスキルを持った技術者を新たに雇うよりは、既存の従業員を再教育した方が、トータルコストが下がる、という考え方が背景にある。
同様な取り組みは他の米企業でも行われている。米Amazon.comは19年に行った発表で、25年までの間に12億ドル以上を投資し、世界の従業員30万人に、大学の授業料を含む無料のトレーニング プログラムへのアクセスを提供するとした(ただAmazonは「resklling」ではなく「upskilling」というワードを使っている)。
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