「インボイスはデスゲーム」、税の押し付け合いが始まる 反対署名18万、 “身バレ”問題も未解決(1/4 ページ)
「インボイスはデスゲーム」――STOP!インボイス代表で、フリーの編集者、ライターの小泉なつみさんは、記者会見でこう指摘した。そのココロは……。
10月からスタートするインボイス制度。対応に向けた動きが活発になる一方で、反対の機運も高まっている。「インボイス制度を考えるフリーランスの会」(STOP!インボイス)が募ったインボイス反対のオンライン署名には、2月13日までに約18万筆が集まった。
1人のライターから始まった反対運動だが、声優や映像作家、配送業者、八百屋、企業の経理担当者など、さまざまな業種・職種の人が声を上げている。
2月13日、衆議院第二議員会館(東京・永田町)で、インボイスに反対するフリーランスの有志が、署名を保存したUSBメモリを財務省の担当者に手渡した後、記者会見を行った。
「インボイスはデスゲーム」――STOP!インボイス代表で、フリーの編集者、ライターの小泉なつみさんは、記者会見でこう指摘した。そのココロは……。
インボイスはデスゲーム 農家もライブハウスも苦境に
インボイスは、年収1000万円以下のフリーランス(免税事業者)に新たな税負担・事務負担を求める制度だ。声優やミュージシャン、映像作家、配送業者、八百屋などの幅広い業種の個人事業主の他、会社員・経営者・消費者にも影響がある。
「インボイス制度は、民間で負担を押しつけ合うデスゲーム構造。発注者と受注者、消費者で負担を押しつけ合う構造だ」――STOP!インボイス代表で、フリーの編集者、ライターの小泉なつみさんはこう指摘する。
小泉さんの父親は、レストランに野菜を卸している卸売業者だ。父は配送事業者にインボイス登録を求めない代わりに、増える税負担をまかなうため野菜の値上げを検討しているという。野菜の値段が上がって影響を受けるのは、レストランや消費者だ。
「取引先の農家に税負担・事務負担をお願いするのは難しい。うちで負担しようと思っている」――群馬県の野菜を東京都の飲食店に卸している八百屋・草木堂野菜店の代表の甲田崇恭さんはこう話す。同社の昨年度の営業利益はわずか3万円、代表の手取りは最高でも月15万円という切り詰めた状況だが、高齢化した農家に負担を求められず、年間30万円ほどの身銭を切る予定だ。
東京でライブハウス「ロフト新宿」「阿佐ヶ谷ロフト」などを運営するロフトプロジェクト代表の加藤梅造さんは「ライブハウスは、アーティストや音響、証明、カメラマン、メイクさん、配信担当者などのフリーランスに支えられているが、全員がインボイスに対応するのは無理。こちらで負担しなくてはならないだろう。経理の手間も考えただけでめまいがする」とウンザリする。
関連記事
- インボイスで漫画家の2割が廃業も? 危機感抱くエンタメ業界 声優・アニメ・演劇団体と共同記者会見
インボイス制度が始まると、エンタメ業界のフリーランスのうち2割が廃業するかもしれない――11月14日、インボイス制度反対を訴える記者会見を、声優・漫画・アニメ・演劇業界が連携して実施した。 - インボイス問題、声優が語る“陳情”のリアル 「超塩対応」の議員と涙のバトルも
「陳情をしっかり聞いて下さる議員さんも多いのですが、“超塩対応”の議員さんもいて……。そういう方が、インボイス制度を左右するキーマンなんです」。インボイスに反対する声優団体・VOICTIONの涙のバトル。 - インボイス開始後、フリーランスはどう納税するのが正解か? 「2割特例」など3つの選択肢
10月にスタートするインボイス制度はフリーランスにとって悩ましい制度だ。複数の制度が用意されており、どれが最適かは状況によって異なる。4つの質問で納税額をシミュレーションできる機能をfreeeがリリースする - 三石琴乃さんもインボイスに「ストーップ!」 STOP!インボイス、動画素材を公募
インボイス制度と問題点の認知を広げる動画に声優の三石琴乃さんなどが参加。今後新たな動画を制作するにあたり、素材を公募している。 - 「インボイス賛成」と話すTOKIUM社長と考える、免税事業者はどうするべきか
インボイス制度が誰のためかといえば話は簡単で、この制度で2480億円の税収増が見込まれている。要するに増税の一つというわけだ。では免税事業者はどう考えて対応していけばいいのだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.