「インボイスはデスゲーム」、税の押し付け合いが始まる 反対署名18万、 “身バレ”問題も未解決(2/4 ページ)
「インボイスはデスゲーム」――STOP!インボイス代表で、フリーの編集者、ライターの小泉なつみさんは、記者会見でこう指摘した。そのココロは……。
“激変緩和措置”はまるでマイナポイント?
インボイスをめぐっては、声優、漫画家・脚本家・アニメ・演劇人・税理士など、さまざまな団体が反対運動を続けている。有志が政治家へのロビー活動を行っており、これまで約100人の政治家に会ってきたという。野党議員を中心に昨年11月、「インボイス問題検討・超党派議員連盟」も立ち上がり、国会で盛んに質問が行われている。
反対論を意識した政府は、納税額を売上税額の2割に軽減する措置(2割特例)を3年間限定で導入するなどの発表した。
激変緩和措置について小泉さんは、「3年間だけまけてあげるから、その間に何とかして」というその場しのぎでしかなく、根本的な解決になっていないと訴える。「『ポイントをあげるからマイナンバーカードを取得して』と誘うマイナンバーカードと同じことが、インボイスで行われようとしている」
激変緩和措置についても、6081人の個人と30の団体が反対を表明している。
“身バレ問題”解決せず 「ストーカー被害のリスクも」
インボイス事業者を公表する国税庁のWebサイトで、個人事業主の本名などが一括ダウンロードできてしまう”身バレ”問題にも進展は見られない。
「(国税庁は)システムを改修したと言うが、Excelを使った簡単なプログラムを使えば誰でもすべて復元できる状態だ。サイトを通じて簡単に事業者の本名が手に入るのは、芸名やペンネームを使っている人には大きな問題。ストーカー被害などもあり得る」と小泉さんは危惧(きぐ)する。
消費税分“値下げ要求”の実態
「もらった消費税は払えという“クソリプ”が付くが」――映画やドラマなどを幅広く手掛けてきた映像ディレクターのブンサダカさんは、消費税が上がっても代金に上乗せできない実情を訴える。「消費税が上がった分、広告代理店から値下げを要求された。断ると発注が止まった」(ブンさん)
発注主との力関係により、増税分を価格に転嫁できない中小事業者は多い。公正取引員会の調査によると、2013年に消費税引き上げ(5%→8%)が行われた際、大手小売業者から値下げ要求を受けたと答えたメーカーは4割近くに上ったという。
不公正な商取引は、公正取引委員会が取り締まるとされているが「公取委の拠点は全国に数十カ所、インボイスに関係する事業者は1000万ともいわれ、対応が整っているとはとうてい言えない」と小泉さんは指摘する。
ヨガインストラクターの塙律子さんも、「業務委託契約を結んでいるフィットネスクラブやスタジオの一部から、インボイスに登録しない場合は報酬を減額するという通知が来ている」と話す。昨年度の年収は100万円に満たず、共働きで2人の子どもをかかえ、ギリギリの生活を強いられているという。
関連記事
- インボイスで漫画家の2割が廃業も? 危機感抱くエンタメ業界 声優・アニメ・演劇団体と共同記者会見
インボイス制度が始まると、エンタメ業界のフリーランスのうち2割が廃業するかもしれない――11月14日、インボイス制度反対を訴える記者会見を、声優・漫画・アニメ・演劇業界が連携して実施した。 - インボイス問題、声優が語る“陳情”のリアル 「超塩対応」の議員と涙のバトルも
「陳情をしっかり聞いて下さる議員さんも多いのですが、“超塩対応”の議員さんもいて……。そういう方が、インボイス制度を左右するキーマンなんです」。インボイスに反対する声優団体・VOICTIONの涙のバトル。 - インボイス開始後、フリーランスはどう納税するのが正解か? 「2割特例」など3つの選択肢
10月にスタートするインボイス制度はフリーランスにとって悩ましい制度だ。複数の制度が用意されており、どれが最適かは状況によって異なる。4つの質問で納税額をシミュレーションできる機能をfreeeがリリースする - 三石琴乃さんもインボイスに「ストーップ!」 STOP!インボイス、動画素材を公募
インボイス制度と問題点の認知を広げる動画に声優の三石琴乃さんなどが参加。今後新たな動画を制作するにあたり、素材を公募している。 - 「インボイス賛成」と話すTOKIUM社長と考える、免税事業者はどうするべきか
インボイス制度が誰のためかといえば話は簡単で、この制度で2480億円の税収増が見込まれている。要するに増税の一つというわけだ。では免税事業者はどう考えて対応していけばいいのだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.