「インボイスはデスゲーム」、税の押し付け合いが始まる 反対署名18万、 “身バレ”問題も未解決(3/4 ページ)
「インボイスはデスゲーム」――STOP!インボイス代表で、フリーの編集者、ライターの小泉なつみさんは、記者会見でこう指摘した。そのココロは……。
「僕らは日本を捨てます」とクリエイター
映像クリエイターのブンさんは、年収1000万円を超える課税事業者だが、コストが大きい(例えば、月固定費だけでAutodeskに約15万円、Adobeに約5万円、ハードに約15万円、サーバに約5万円、電気・通信費に約10万円……合計約50万円)上、テレビ局などの制作費用が年々減っているため予算はギリギリだ。インボイスが始まり、制作に参加してくれる免税事業者(俳優など)の消費税分を肩代わりすると、経営はさらに厳しくなる。
赤字スレスレでも文化を創る仕事に誇りを持っていたが、仲間のクリエイターは次々に米国や中国などに渡っているという。「インボイスがこのまま続行されるなら、クルーを連れて海外に行く手もある。官僚も政府も日本の文化が大嫌いのようで、毎回いじめられるので、このままならば、僕らは日本を捨てます。僕らには選択肢がある」
ロフトの加藤代表も「この国は文化や芸術を重く見ていない。商売にしか見ていないんだと思う。日本の文化芸術は今でも遅れをとっているが、さらに遅れてしまう」と危機感をあらわにする。
企業の経理に無駄な業務
企業も例外ではない。“経理のプロ”として、多くの中小企業でパートタイム経理として働く、経営士の堺剛さんによると、中小企業の管理部門はほぼワンオペ状態で、経理・総務・労務などを数人で回しており、インボイス対応でさらに忙しくなりそうだ。
経理担当者には、請求書がインボイスの形式に合っているか確認し、インボイス番号も確認するという作業が新たに必要になる。取引先が100社あれば、1社3分で終わったとしても300分、5時間分の、付加価値を生まない“無駄な作業”が発生する。「国は中小企業に付加価値を生む努力を求めながら、何の価値を生まない作業を押しつけている」(堺さん)
経理担当者の間でも個人事業主への発注を控えるよう、担当部署に依頼する動きが出ているという。「インボイスは、岸田政権が掲げている、フリーランス活用や起業しやすい活用づくりに逆行する」(堺さん)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
インボイスで漫画家の2割が廃業も? 危機感抱くエンタメ業界 声優・アニメ・演劇団体と共同記者会見
インボイス制度が始まると、エンタメ業界のフリーランスのうち2割が廃業するかもしれない――11月14日、インボイス制度反対を訴える記者会見を、声優・漫画・アニメ・演劇業界が連携して実施した。
インボイス問題、声優が語る“陳情”のリアル 「超塩対応」の議員と涙のバトルも
「陳情をしっかり聞いて下さる議員さんも多いのですが、“超塩対応”の議員さんもいて……。そういう方が、インボイス制度を左右するキーマンなんです」。インボイスに反対する声優団体・VOICTIONの涙のバトル。
インボイス開始後、フリーランスはどう納税するのが正解か? 「2割特例」など3つの選択肢
10月にスタートするインボイス制度はフリーランスにとって悩ましい制度だ。複数の制度が用意されており、どれが最適かは状況によって異なる。4つの質問で納税額をシミュレーションできる機能をfreeeがリリースする
三石琴乃さんもインボイスに「ストーップ!」 STOP!インボイス、動画素材を公募
インボイス制度と問題点の認知を広げる動画に声優の三石琴乃さんなどが参加。今後新たな動画を制作するにあたり、素材を公募している。
「インボイス賛成」と話すTOKIUM社長と考える、免税事業者はどうするべきか
インボイス制度が誰のためかといえば話は簡単で、この制度で2480億円の税収増が見込まれている。要するに増税の一つというわけだ。では免税事業者はどう考えて対応していけばいいのだろうか。

