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Slack vs. Chatwork ビジネスチャットの思想の違いを探るビジネスチャット対決(5/6 ページ)

今回のSaaS対決では、ビジネスチャットの国内ツートップであるSlackとChatworkを取り上げる。ともにカテゴリーとしては「ビジネスチャット」にはなるが、その思想やターゲット、機能、使い勝手は驚くほど違う。単なる機能比較表だけでは見えてこない両者の違いをいつものように歴史も含めてひも解きながら解説していく。

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 2つ目の特徴はグループである。Slackはワークスペース、チャンネル、スレッドという多重構造だったが、ChatworkはひとつのアカウントがAグループ、Bグループ……という形で複数のグループに参加して、それぞれのグループ内で関係者とやり取りをする、という平面構造である。

 非常にシンプルで分かりやすい反面、グループの参加人数が増えてくると複数の話題が平行でやり取りされ始め、コミュニケーション不全を起こしやすい。筆者の感覚ではあるが、1つのグループは多くても20〜30人程度が限界であり、そのためには1つの会社の中でも部門ごと、規模によっては部門内でも細かくグループを分割しなければいけない。

 Slackは数千人の規模でも利用しているケースを見たことがあるが、Chatworkの構造では大規模な組織で活用するのはかなり厳しい。最も活用しやすいのは、税理士事務所のような小規模な組織が、100社を超える顧客を抱え、そこと頻繁にコミュニケーションをするようなケースである。税理士事務所でChatworkを導入しているところが多いのは、構造と機能がマッチしていることに加えて、前述のメールの延長線上で理解しやすい設計思想や使い方もあり、顧問先にも説明しやすく、アカウントさえ作ってもらえればやり取りが簡単にできるからだ。


Chatworkのグループ、筆者作成

 Facebook MessengerやLINEなどの個人向けのチャットツールも、グループを作ってコミュニケーションをする、という使い方は同じである。ただ、プライベートとビジネスでアカウントを分けなければ、セキュリティ面でのリスクも大きく、公私の切り替えも難しくなってしまう。Chatworkはシンプルな構造と、1人1アカウントというメールと同じ概念を採用することで、ビジネスチャットで盤石の地位を確立したのである。

 以前の記事でfreee会計とMoneyForward会計を比較したが、freee会計と相性が良い組織はSlackを導入し、MoneyForward会計と相性が良い組織はChatworkを導入する傾向があるようだ。Slackを使いこなしている人から見れば、Chatworkはかなり機能不足に見えるかもしれないが、中小企業にはちょうど良いシンプルな機能であるともいえる。

 伊藤忠テクノソリューションズ社が実施した「大手企業のビジネスチャットツール導入事例調査」によるとビジネスチャットの導入企業は約30%。中小企業が9割を占める日本において、まだまだChatwork導入の余地は大きい。

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