慌てるな 免税事業者はインボイスどうすればいい? 税理士にぶっちゃけて聞いてみた(5/5 ページ)
年商1000万円以下の免税事業者は、インボイス制度にどう対応したらいいのか? メリットとデメリットを、税理士の杉山靖彦さん(杉山会計事務所代表)に聞いた。
「本則課税」は事務作業が大変!
免税事業者がインボイスに対応した場合、事務作業はどれぐらい増えますか
届けを出し、インボイス登録番号の発行を受けた後は、請求書をインボイス対応にします。インボイスには、登録番号を記載したり、税額を別記するといった必要があります。
経費の領収書を取っておくのは従来通りです。2割特例や簡易課税を選べば、経費については個別に消費税を計算する必要はありません。
問題は本則課税です。受け取った領収書から仕入税額を正確に出して、売上税額から差し引く必要があります。仕入先がインボイス発行事業者か、領収書を見て1枚ずつ確認し、インボイス発行事業者ならば、番号が本物かチェックした上で、仕入税額を計上することになります。かなり煩雑です。
事務作業が本当に大変ですよね。
現場の企業や税務署の人もすごく大変ですし、実務的には現場で本当に回しきれるのか疑問ではあります。
例えば、インボイス番号が本物かの確認は、大手企業はやるでしょうが、最初からチェックをしなかったり、少額なら確認しないという会社も出るかもしれません。「チェックはしていないけれど、間違いがあったら税務署で指摘してください」と言い出すかもしれない。取引先が嘘をついてるかどうかまで確認するなんていうことが本当にできるか私たちも戦々恐々です。
韓国や台湾など、10年以上インボイスを運用している国は、仕組みを工夫しています。例えば、専用のインボイス用紙を政府が発行していて、登録事業者しか使えないようにして、インボイス番号の真正性をいちいち確かめる作業を不要にしたり。
台湾は、政府負担でインボイスに宝くじをつけています。お客さんは、インボイスをもらったほうが宝くじがついていてトクだから、レシートを必ずもらおうとします。これにより、事業者がインボイス(レシート)を出さずに売り上げを隠す、といった不正を防いでいます。
「インボイス制度は良くない」
日本では、インボイス反対運動もまだまだ盛んです。10月にインボイス制度が始まらない可能性はありますか?
天変地異でも起ない限り、ないでしょう。
個人的には、今のインボイス制度はあまり良くないと思っています。消費税をしっかり取りたいというのであれば、もっと違う方法があったはずです。
免税事業者を残したままにするから複雑になるんです。インボイス形式とそうでない請求書が混在することになり、現場の負担がぼう大になってしまう。例えば、免税事業者を撤廃する代わりに、税額が年間50万円以下なら消費税の納税を免除し、その額を段階的に下げていくなど、移行期間を設けながら消費税の納税意識を高めていく、といったこともできたはずです。
小規模事業者が有利になる制度(免税事業者制度など)を作ったと言いたい政治家と、税金をもっと取りたい政治家がいて、とても煩雑になってしまいましたよね。
税理士 杉山靖彦
1967年東京生まれ、早稲田大学卒。1994年マイクロソフト株式会社(現日本マイクロソフト株式会社)入社。営業、経理を経て、1995年より製品マーケティング部門でOfficeとPowerPointのプロダクトマネージャとして、MacOffice 4.2、Office95、Office97のリリースを担当。1997年8月退社。
1998年4月に会計事務所を開業。東証マザーズ公開会社やタリーズコーヒージャパンの取締役や監査役を歴任、スクワッド、エス・アイ・ジェイをはじめとする複数のベンチャー企業の取締役、監査役、早稲田大学非常勤講師を勤める
また、各種パソコン雑誌のライターとして業務ソフトやOffice関連の執筆活動も展開している。著書に「『あるある』で学ぶ忙しい人のためのパソコン仕事術」(インプレス)など多数。
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