従来の法人カードとは何が違うのか? UPSIDER vs バクラクビジネスカード(後編):SaaS対決(2/3 ページ)
後編では、UPSIDERとバクラクビジネスカードの思想の違いと、それに基づく機能と特徴を概観する
バクラクビジネスカード
バクラクビジネスカードは、LayerXが提供するバクラクシリーズのクレジットカードである。独自の与信モデル、バーチャルカードといった機能を提供し、スタートアップを中心に支持を集めている点はUPSIDERとも共通するが、バクラクビジネスカードの強みは、決済領域の前後にあたる一連のサービスをバクラクシリーズで揃えていることだ。
受取請求書の回でもバクラク請求書を取り上げたが、バクラクシリーズの各サービスは単体でも必要十分な機能を提供しており、それらが連携することで更なる強みを発揮する構図である。
クレジットカードがどこでも利用できる環境が整った中で、ビジネスカードに対する主なペインは、適切な与信枠が付与されないことと、利用後の処理が煩雑なことの2点が残った。
与信枠に関しては、ライフカードの利用先限定ビジネスカードや、各社が会計や銀行のデータを取得し独自の与信モデルを構築するなど、一定の解決策が見え始めている。一方で、業務の効率化部分については、まだまだ改善の余地が大きい。
LayerXのミッションは「すべての経済活動を、デジタル化する。」であり、その中でバクラクシリーズが担うのは法人の支出管理全体のデジタル化である。UPSIDERが「法人間の決済領域」をターゲットにしているのに対して、バクラクは決済の前後に発生する管理そのものをデジタル化によってスムーズにしようとしている。バーチャルカードによって用途別にカードを発行できるようなり、経費管理の利便性は大きく向上したが、バクラクはさらに範囲を広げて支出管理の業務プロセス全体の効率化も行おうとしている。
特にビジネスカードと関連性が強いのはバクラク申請だ。ビジネス運営上不可欠な申請(稟議)と一体で利用することで、経理側の確認作業は圧倒的にスムーズになる。領収書などで費用の内容を確認することも大事だが、その経費は承認されているのか、どの予算枠での利用かという管理が重要だからだ。
法人では、購買を行う前に事前申請手続き(稟議)で決裁を取るのが大原則であり、決済金額によって課長・部長・役員など、どのレベルの承認を受ければいいのかが社内規定で定められている。購買担当者は、見積をとって社内稟議で承認を得た上で発注を行う。そして、請求書払いであれば、商品の納品やサービスの提供を受けた後で請求書を受け取り支払手続きをするし、クレジットカード払いであれば発注時にクレジットカード番号などを入力して決済する。
大まかな流れはこの通りであるが、支出管理で課題が多いのが事前申請と決済とのひも付け処理である。数百行にもなるカードの利用明細と稟議とのひも付け、数百件の支払依頼と稟議とのひも付け、いずれも長らく経理担当者を悩ませていた気合と根性が求められる非効率業務である。
LayerXは、バクラク請求書によって受取請求書の支払管理の課題を解決し、バクラク申請とバクラク請求書を連携することで事前申請と受取請求書のひも付けをスムーズにした。その次にバクラクビジネスカードによって、クレカ決済の支払管理の課題を解決し、バクラク申請と連携させることで事前申請とクレジットカード明細とのひも付けをスムーズにしようとしている。
これまで紙とExcelによるアナログ管理が横行していた支払管理の領域は、AI OCRを活用した処理システムやバーチャルカードの活用によって大幅に効率化される目処がたってきた。次は事前申請とのひも付けもスムーズにしたいと考えるのは当然のことだろう。
世の中にはたくさんの電子稟議システム(ワークフローシステム)が存在するが、決済システムと連携してスムーズにひも付けや管理ができるものはなかった。バクラク請求書とバクラク申請の連携で手応えをつかんでいたLayerXは、もう1つのピースとしてバクラクビジネスカードを追加し、その利用明細をバクラク申請と連携させることで、事前申請と決済の紐付けがスムーズになり、法人の支払管理における大きなペインが解決されるのである。
もちろん、電子稟議システムの用途は購買申請だけではない。すでに別の稟議システムを導入している企業がバクラク申請を導入する際には、社内の業務プロセスや利用ツール全般を見直す必要に迫られる。企業にとって簡単な意思決定ではないが、バクラクシリーズはそれぞれのプロダクトが単品でも十分に機能するクオリティであるため、いきなり全てをバクラクシリーズに置き換えなくても業務効率化メリットは十分に享受できる。ただ、いずれはバクラクシリーズで全てを統一した方が圧倒的に効果が出る、というメッセージが打ち出せるのがバクラクの強みである。
23年2月末、55億円の資金調達を発表した際に、LayerXはAIで無駄な支出を検知するサービスを開発することを表明した。事前申請から精算まで自動化する仕組みも今後リリースするとしている。LayerXにとってバクラクビジネスカードは単なる決済手段を提供するだけでなく、法人の支払管理全体をデジタル化し、効率化していくために不可欠なピースなのである。
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