日本独自のAIモデル開発は難しい 自民党が「AIホワイトペーパー(案)」公開
自民党の「AIの進化と実装に関するプロジェクトチーム」は3月30日、検討を進めている「AIホワイトペーパー(案)」を公開した。
自民党の「AIの進化と実装に関するプロジェクトチーム」は3月30日、検討を進めている「AIホワイトペーパー(案)」を公開した。「AI新時代における日本の国家戦略」と題し、国内におけるAI開発基盤、行政でのAI利活用、民間でのAI利活用、AI規制について、提言をまとめている。
平将明衆議院議員を座長とするプロジェクトチームで、弁護士でもある塩崎彰久衆議院議員などが、有識者を交えて検討してきたもの。2月には松尾豊東京大学教授が、プロジェクト向けにまとめたAIに関する資料が分かりやすいとして話題になった(記事参照)。
日本独自AIモデル開発は厳しい
ChatGPTなどのLLM(大規模言語モデル)の隆盛を背景に、各国はAI開発への投資を加速している。米国は1月に、AI向けの計算資源やデータ提供などのプラットフォーム整備に26億ドル(約3400億円)と投じる方針を発表、英国も3月に、自国版LLMの開発も視野に入れたスーパーコンピューターの開発に9億ポンド(約1450億円)と投じる。インドも、AI研究センターの設立や世界最大規模のデータセット構築を発表した。
各国のこうした動きを受け、日本独自のAI開発基盤に向けた方針が示されるかが、本ホワイトペーパーの焦点の一つだった。
具体的には、「先行している海外の基盤モデルAIを土台とし、またはパートナーシップを組む形で、国内でも基盤モデルを用いたさまざまな応用研究・開発を加速させるべき」としており、自国独自のAIモデルの開発には消極的だ。
プロジェクトに出席した多くの有識者が「短期的には競争力を有する独自の基盤モデルを国内リソースのみで開発することは容易ではない」という見立てで共通していることが理由。
海外プラットフォームの利用活用を通じて知見を蓄積し、長期的には国内におけるAIモデルの開発能力構築に向け、投資と支援を行っていくとしている。
また海外の画像生成AIが、日本に関する絵をうまく作成できない、いわゆる「データバイアス」について、課題を提起。官民データの利活用に対し、標準データモデルの整備のほか、政府や地方公共団体が保有している公式データをAIモデルで利活用できるよう、整備を進めるとした。また、データバイアス解消のため、海外のAIモデルに日本関連データを積極的に提供することも盛り込んだ。
民間はAI活用とデータに責任を持つチーフデジタルオフィサー(CDO)の設置を
国によるAI活用としては、国会答弁の下書き作成や議事録作成などをAIで行うパイロットプロジェクトへの着手提言や、AI・スマートシティの支援を掲げた。民間によるAI活用としては、一定以上の規模の民間事業者において、AI利活用やデータの取り扱いに責任を持つチーフデジタルオフィサー(CDO)の設置を推奨するとしている。
AI規制については、海外でAI一般に対する法規制の議論が進んでいるのに対し、国内では医療や交通など各分野で個別に対処しているのが現状だ。これに対し、日本が欧米と異なる規制の枠組みを設けることはリスクが高いとし、人権侵害、安全保障、民主主義プロセスへの不当介入などについて、EU、米国、中国などの検討状況を分析したうえで、国際的なルール作りに参画することを掲げた。
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