BPSPとは何か? 企業の請求書をカード払い 広がる法人キャッシュレス(2/3 ページ)
個人のキャッシュレス決済が順調に拡大する中、次第にホットになってきているのが法人キャッシュレスだ。近年、BPSPと呼ばれる仕組みを使った「請求書支払い代行サービス」が登場し、企業間の支払いをクレジットカードで行いやすくなった。その仕組みとメリットとはなんなのだろうか。
BPSPという新しい仕組み
実はこうした仕組みが最近までなかったのは、クレジットカードの手数料に関する商習慣にあった。通常、クレジットカード払いは売り手(加盟店と呼ばれる)が手数料を負担する。街でカード払いをしたことがあれば、現金で買ってもカードで買っても料金は同じだろう。これは手数料を買い手に転嫁することを、カード会社が禁止しているからだ。
ところが法人間決済においてはこれが課題になる。クレジットカードの手数料負担は小さくないからだ。1〜3%程度の手数料を売り手が負担しては、薄利多売なビジネスでは利益の多くが吹き飛んでしまう業界もある。
そこでVisaが用意したのがBPSP、Business Payments Solution Providerという仕組みだ。海外では先行して提供されていたが、2022年3月に国内でも提供が始まった。Visa以外もMastercardがBPAP(Business Payment Aggregator Program)、JCBがBBPS(BtoB Payment Service)という名称で、ほぼ同様のサービスを提供している。
仕組みは「カードで支払いたいが相手が受け付けてくれない場合、中間加盟店を作る。買い手はカードで払い、BPSPが従来通り銀行振込で代わりに支払う」(ビザ・ワールドワイドジャパン シニアディレクターの加藤靖士氏)というものだ。
請求書にかかわる新領域
企業間取引は請求書による掛け払いが基本のため、法人キャッシュレスも請求書に絡んだところから発展してていく可能性が高い。BPSPなどを使った請求書支払い代行サービスは、請求書支払いのサイトを長くすることで資金繰りを改善するものだ。一方で、請求書を発行した側が、入金までのサイトを短くするサービスがファクタリングだ。
いずれも支払いを遅くしたり、入金を早くしたりできるサービスで、企業は1〜4%程度のコストを払って資金繰りを改善している形だ。
この領域に取り組むフィンテック事業者が増加しているのは、インボイス制度の導入とともに請求書のデータ化、デジタル化が進んでいるからだ。例えば請求書支払い代行サービス事業者は、架空債権などに対する返金リスクを負っている。そのため、請求書の売買契約について事実確認を行ない、外部データベースなどでのチェックも行っている。現在の請求書は紙がメインだが、「インボイスの制度運用が進むと、請求書データがデジタルになっていく。デジタルで情報が取れれば審査が簡単にできるようになっていく」とマネーフォワードケッサイの冨山社長は展望を話す。
これはインボイス受領サービスにとっても、新たな金融サービスの提供につながるということだ。受け取ったインボイスの一覧画面に、例えば「カード払いで支払いを遅らせる」といったボタンを表示できれば、極めて簡単に資金繰りが改善できる。金融機能をサービスに組み込む、エンベデッドファイナンスの一例だ。
請求書支払い代行サービス「1click後払い」を提供するROBOT PAYMENTも、「請求管理ロボ」という同社の請求書発行サービスと組み合わせることで、回収効率改善や、キャッシュフロー改善など、サプライヤーに対するメリットを訴求できるサービスへの進化を構想している。実現すれば、請求書発行側、受領側の双方で手数料を分担するような仕組みを実現でき、「幅広い中小企業の資金繰り改善の役に立つサービスになる」(1click後払い責任者の川本圭祐氏)と展望を話す。
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