アリババなど中国各社からChatGPT対抗AI続々 “にわか”ではない開発の背景:浦上早苗の中国式ニューエコノミー(5/5 ページ)
4月11日、中国アリババグループが自社開発の対話型AIを発表した。3月には中国バイドゥ、米Google、4月には米Amazonも参戦を表明し、中国では5月までに数社がリリース予定だ。「中国版ChatGPT」は数年前から開発されており、社会実装では中国が先行する可能性もある。
社会実装のペースも加速か
ともあれ、中国では国産の大規模言語モデルが複数リリースされた。米国のサービスにアクセスしにくいという中国特有の事情も絡んではいるが、「ChatGPTをどう使うか」「ChatGPTが社会をどう変えるか」という議論は盛り上がっているものの、ユーザー側の視点に終始している日本とはかなり環境が違っている。
大規模言語モデルを既に発表済みの中国企業は、いずれも法人向けサービスに重点を置いている。産業別に大規模言語モデルのベースを構築し、顧客企業や外部エンジニアが自由にカスタマイズして自社の業務効率に活用するイメージだ。
そして中国の一般ユーザーは現時点で、アリババとバイドゥの2つの対話型AIにアクセスできるようになった。同じ質問をしてそれぞれがどう答えるかなど、「使ってみた」「比較してみた」といった情報が次々に流れており、通義千問に画像生成機能が加わると、利用者はITにさして興味のない人々にも広がるだろう。
今はChatGPTと差があるにせよ、タイプの違うテック企業による複数のプロダクトが出ることでユーザー教育が加速し、企業間競争によって技術の進歩も一段とスピードアップするはずだ。対話型AIの滑らかさや正確さを試し、比較するフェーズは日本より短期間に過ぎ去り、どう使うかを提示し、企業獲得や開発を競うフェーズに移行しそうだ。
筆者:浦上 早苗
早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育などを行う。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。帰国して日本語教師と通訳案内士の資格も取得。
最新刊は、「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。twitter:sanadi37。
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