アリババなど中国各社からChatGPT対抗AI続々 “にわか”ではない開発の背景:浦上早苗の中国式ニューエコノミー(4/5 ページ)
4月11日、中国アリババグループが自社開発の対話型AIを発表した。3月には中国バイドゥ、米Google、4月には米Amazonも参戦を表明し、中国では5月までに数社がリリース予定だ。「中国版ChatGPT」は数年前から開発されており、社会実装では中国が先行する可能性もある。
ChatGPTがもたらした想定外
ただ、大規模言語モデルや生成AIの開発に数年前から取り組んできた中国メガテック勢も、ChatGPTの登場は想定外だったようだ。その理由は2つある。
アリババが「自社の全プロダクトに通義千問を搭載していく」と宣言したように、多様な事業を抱える中国メガテックは、大規模言語モデルを自社プロダクトやサービスを改善するための“裏方の技術”と見なしていた。複数の企業が19年以降、自社のモデルに名前を付け公の場で発表していたが、エンジニアや研究者向けの研究発表に近かった。アリババクラウドの周CTOは、「通義千問を昨年秋にリリースしていても誰も注目しなかっただろう」と、国内メディアに語っている。
ところがChatGPTは応用シーンを提示せずに、純粋な対話型AIとしてリリースされた。誰でも使える“おもちゃ”のようなプロダクトだが、それ故に多くの人が試し、世界的なブームになった。中国でも“中国版ChatGPT”を待ち望む声が高まり、中国メガテックは開発のギアを上げざるを得なくなった。
もう1つの想定外は、ChatGPTの出来の良さだ。バイドゥの李CEO、アリババクラウドの周CTOはいずれも、ChatGPTの完成度を率直に賞賛している。李CEOは「文心一言プロジェクトを始めたとき、ChatGPTには1カ月で追いつけると考えていたが、実際1カ月経つと差が広がった」と語った。
それでもAIのリーダー企業を目指すバイドゥは「中国で最初にリリースする」ことにこだわり、3月に見切り発車で発表した。一方、多くのプロダクトを持ち、張会長いわく“1999年の創業以来最大”の組織改革を3月末に行ったアリババは、DingTalkとAIスピーカーへの搭載を同時に発表することで、生成AIによって既存プロダクトがさらに賢くなる未来を示そうとした。
アリババクラウドの周CTOは「通義千問の発表は“中間発表”のようなもの」と語っている。その言葉には、ChatGPTが社会を教育・啓蒙しているタイミングを好機と捉え、未完成のままリリースに踏み切ったことがことが伺える。
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