「白ロム割引」規制で「1円スマホ」消滅か? 公取委「独占禁止法上問題となるおそれ」も:房野麻子「モバイル新時代」(4/4 ページ)
総務省の電気通信市場検証会議下にある競争ルール検証WGが開催中で、回線契約に依存しない「白ロム割引」が過剰な割引額になっているため、規制が求められている。
「端末とネットワークはセットで進化してきた」のか
白ロム割引の規制を求めている一方で、MNOは通信契約にひも付く端末の割引については緩和を求めている。
22年11月に行われた本WGの第37回会合で、ドコモは「ユーザ間の不公平が生じない、中古価格を参考に適正価格で新品端末が販売される市場で競争を行うべき」として、中古端末のSランクやAランクの販売価格を参考にして割引上限を決めてはどうかと提案した。
ソフトバンクは「回線セットの上限2万円に加え、端末単体値引きを含めた値引き上限額」を提案。この割引上限は端末の「中古買取価格」を目安に規定することを提案している。WGの中にも、セット販売時の割引上限額は「4万から5万円に緩和してもいいのでは」と発言している構成員が存在する。
なお、KDDIは割引の緩和を具体的に求めてはいないものの、端末と通信をセットにすることが、5Gの普及や端末の購入促進、転売ヤー対策につながるとしている。
ドコモも、「通信事業者として、ネットワーク及び端末をセットで進化させ、その上で実現する各サービスにより新たな価値を提供」してきたこと、また、キャリアショップによるサポートを望んでいるユーザーが多く、「多くは通信とセットでの端末購入を選択している状況」と説明。端末とネットワークは分離できないものという立場だ。
総務省は通信料金と端末代金の完全分離を目指して、長年、さまざまな施策を行ってきた。しかし、公取委の調査で、通信料収入が端末販売の赤字補填に使われていたことが明らかになった。つまり、通信料を原資とする端末値引きが行われている状況は変わっていない。
構成員からは「大変残念だ。こういうことだと、MNOが自ら端末を販売してはいけない、別会社にして独立採算でやってもらうのが最終的なあるべき姿になると思う」という厳しい発言も飛び出した。
もしキャリアが端末を販売できなくなると、どんな問題があるかと問われ、ドコモは「今後のサービス開発や進化に支障が懸念されること、ならびにお客様の期待に応えられないという心配がある」と回答していた。
なお、現状の回線とセット時の端末割引は、法令に違反しているわけではない。通信契約があることを条件とした割引も、2万円の上限があるとはいえ否定されてはいない。
「端末」をWikipediaで調べると、「回線やネットワークの末端に接続され、他の機器と通信を行う主体となる機器のこと」とある。ネットワークの先にあるもので、ネットワークから切り離して考えることが難しい機器だ。特に携帯電話の場合、各MNOに異なる周波数帯域が割り当てられ、MNOは割り当てられた帯域を有効活用してネットワークを構築し、通信サービスを提供する。その通信サービスを利用するには、割り当て周波数に対応した携帯端末が必要だ。端末と通信を分離すること自体に少し無理があるのではとも感じてしまう。
とはいえ、通信料金と端末代金の完全分離の流れが変わることはないだろう。「1人1台」などの対策で転売ヤー問題はかなり落ち着き、公取委が緊急実態調査で不当廉売のおそれがあると公表して以降、極端な安値で端末が販売されることは減っているという声もある。WGがどんな改善案を示してくるのか、今後も注目していきたい。
筆者プロフィール:房野麻子
大学卒業後、新卒で某百貨店に就職。その後、出版社に転職。男性向けモノ情報誌、携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年にフリーランスライターとして独立。モバイル業界を中心に取材し、業界動向を追っている。
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