AIは著作権を持てるか……中国でバーチャルヒューマンの「権利」を巡る初の判決:浦上早苗の中国式ニューエコノミー(4/5 ページ)
ChatGPTなどの生成AI技術に注目が集まるなか、AIを巡る知的財産権の法的枠組みの整備も急務となっている。AIを活用したバーチャルヒューマンの普及が進む中国では、バーチャルヒューマンの権利侵害を巡る訴訟で国内初の判決が下された。しかし、今回の判決では解決できない問題も残る。
裁判の争点
裁判所は
1.Ada、つまりバーチャルヒューマンは人間と同じように著作権や著作隣接権を有する存在か
2.Xmovが公開したAdaの画像と動画が著作権法で保護される対象物であるか、Xmovが動画の実演権を有しているか
3.著作権侵害および不正競争が認められるか
の3点を主要争点とし、審理した。
裁判所の判断
1.バーチャルヒューマンは「人」か
Xmovは当初からAdaを人だとは主張していなかったようだが、裁判所はバーチャルヒューマンが人として著作権を持つのかという論点から審理し、Adaがデザイナーの関与と選択によって、AI技術の集合体としてつくられた「ツール」であり、自然人が持つ著作権を有しないと判断した。
また、Adaが動画で行っているパフォーマンスは徐氏の動きをデジタル技術で再現したものであるため、Adaは実演権も有しないと結論づけた。現行の著作権法の枠組みでは、バーチャルヒューマンは著作権や著作隣接権を有する存在ではないということだ。
2.Adaの画像と動画は著作権法で保護されるか。Xmovは動画の実演権を有しているか
裁判所はAdaをデザイナーが制作し、商業的に利用される「芸術作品」と認定。Adaの画像や動画は視聴覚著作物、動画作品に該当し、Xmovは著作物の財産権と動画製作者としての権利を有していると判断した。
また、Adaの動きの原型になった徐氏はXmovの業務としてパフォーマンスをしていることから、著作権法の実演者に合致しており、その実演権は雇用者のXmovに属するとした。
3.B社の行為は権利侵害に相当するか
裁判所はB社による2動画の公開が、視聴覚著作物のネット配信権を侵害したほか、映像制作者と実演家の芸術作品のネット配信権も侵害したと判断した。
また、SNSアカウントで「バーチャルヒューマン関連企業」を標ぼうしているB社が、Adaの動画に示されるロゴを自社のものにすり替えて講座を宣伝する行為は、消費者の理性的な決断を妨げ、市場競争の秩序を撹乱し、Xmovの商業利益を侵害すると認定。虚偽宣伝など不当競争にも該当するとした。
結果、裁判所はB社に12万元(約230万円)の支払いを命じた。
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