みんなの銀行2周年 決済事業者を中抜きする「A2A決済」とは何か
ふくおかフィナンシャルグループ傘下のデジタルバンク、みんなの銀行が5月28日に2周年を迎えた。預金量が伸び悩む中、フォーカスするのはB2Bの「A2A決済」だ。
ふくおかフィナンシャルグループ傘下のスマホ専業銀行、みんなの銀行が5月28日に2周年を迎えた。口座数は67万、アプリダウンロード数は200万と広がった。一方で預金量は227億円にとどまっている。
永吉健一頭取は「野心的な目標を掲げすぎた」と話すと共に、3年目となる2023年は「BaaS事業元年として拡大に注力していきたい」とした。
更新系APIを活用したA2A決済
みんなの銀行はB2C事業のほか、B2B向けにBaaS事業を展開している。キーとなるのは銀行APIだ。
22年9月には米OpenID Foundationが策定したセキュアなフィンテックサービスを実現するAPI仕様「FAPI」に対応し、参照系APIの提供を開始した。さらに、23年5月には、三井住友海上プライマリー生命保険と連携し、更新系APIを活用した資金振替を実現した。
永吉氏は、更新系APIの1つである「口座振替API(Payments)」を使った各種サービスを「A2A決済」と呼ぶ。A2Aとは「Acount to Acount」の略で、銀行口座直接引き落とし型の決済サービスだ。
決済サービスの手数料が高い海外では、A2A決済が急速に普及し始めている。南米ではA2A決済を月に5回以上利用するユーザーが35%にのぼり、ブラジル中央銀行もPIXと呼ばれるA2A決済システムを設立して後押しを行っている。関わるプレイヤーが少ないA2Aは、コスト削減に効果があるからだ。
「金融の進化が遅い国では、監督官庁の支援もあり、テクノロジーを使ってA2Aが一気に進んでいる」と永吉氏。
従来の決済の仕組みでは、カード会社や各種Pay事業者など間に決済事業者が入って決済が完了していた。一方、A2A決済では決済事業者が不要で、ユーザーが店舗などで支払い操作を行うと、銀行の更新系APIを利用して銀行から事業者に支払いが行われる。
Revolutにも提供
三井住友海上プライマリー生命保険と取り組んだのは、スマホですべての手続きが完結する資産形成・運用型の変額年金保険「AHARA」だ。保険料500円から積み立てることができるが、これは低コストなA2A決済だから実現できたものだ。
同様に、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(U.S.M.H)ともA2A決済の実現に向けて基本合意を結んでいる。これはU.S.M.Hが提供するデジタルブランドignicaと連携して、みんなの銀行の口座から直接商品の代金を支払えるようにすることも目指す。
6月6日には、海外送金などの金融サービス「Revolut」を提供するREVOLUT TECHNOLOGIES JAPANとの基本合意も発表した。これは口座振替に代わり、更新系APIを用いてみんなの銀行の口座からRevolutの残高にチャージを行うものだ。
ただし、日本のように金融サービスがあまねく普及している国の場合は、A2Aの普及は海外とは違う形になるだろう。クレジットカードなど各種決済手段や口座振替に比べてコストが安いというのがA2Aの最大のメリットだ。
「(国内で普及している口座振替は)例えば数十円が定額でかかる。A2Aは、事業者にとっての決済コストを抑えられるのが、導入の入り口になっている」(永吉氏)
もう一つはセキュリティだ。20年8月に起きたドコモ口座不正引き出し事件では、口座振替が使われており、さまざまなセキュリティの課題が指摘されてきた。更新系APIは口座振替に比べ、セキュリティが優れており、銀行側の対応が進めば資金移動の新たな手法として普及する可能性も秘めている。
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