「自社版ChatGPT」をグループ全社導入 約1万5000人で2カ月使った手応えは? ベネッセに聞いた(1/2 ページ)
「自社版ChatGPT」をグループ全社に導入したベネッセ。導入から2カ月余り、現状の手応えをキーパーソンに聞いた。
IT業界の話題を席巻する「ChatGPT」などのチャットAI。すでに個人利用の枠を超え、企業や自治体が業務改善を見込んで導入する例も増えている。例えばKDDI、ソフトバンクなどが利用や導入を発表している。
ベネッセホールディングスもその1社だ。同社は4月に独自の社内チャットAI「BenesseChat」(旧・Benesse GPT)を発表。すでにグループ全社の約1万5000人に展開している。
導入から2カ月余り。ベネッセホールディングスにおける社内でのチャットAI活用は、いまどんな段階にあるのか。BenesseChatの開発責任者である植田省司さん(インフラソリューション部 部長)や、社内のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する浅井あさこさん(デジタルイノベーションパートナーズ 広報)に聞いた。
要約、アンケートの分析……ベネッセによるAIの使い方は
BenesseChatは、大規模言語モデル「GPT-3.5」などのAPIを米Microsoftのクラウドで使える「Azure OpenAI Service」を活用して開発した社内向けサービスだ。UIは独自だが、ChatGPTとほぼ同じような機能が使える。入力した情報が二次利用されない仕組みも整えた。ただし、使っているLLM(大規模言語モデル)は最新の「GPT-4」ではなく「GPT-3.5」だ。GPT-4は、Microsoftによる正式提供が始まっていないためだ。
社内で取ったアンケートによれば、4割の社員が「ほぼ毎日使っている」、3割が「週2〜3日使っている」、3割が「週1回使っている」と答えた。主に議事録の要約や、ブレインストーミング、メールのひな型作り、契約書面の抜け穴探し、アンケート結果の分析、前任者が残したドキュメントから必要な情報を探すといった用途で使われているという。
中には「塾選びのサービスを巡る話し合いの中で、『お客様はどう塾を選ぶのか』という疑問が改めて出た。社員の中には過去の経験やデータから、バイアスが掛かっている人もいる。そこでAIに質問し『中立的な意見はこうなる』と認識を擦り合わせた」(浅井さん)といった使い方も。植田さんによれば、基本的には事業部門より技術系部門の利用が多いという。
グループへの展開に当たっては、セキュリティのガイドラインも整備した。セキュリティの担当チームと協議の上、機密や個人情報を入力しないといった暫定的なルールを策定。適宜アップデートしながら運用する方針にした。ただし現在は、日本ディープラーニング協会が提供するテンプレートが利用の実態に即しているとして、カスタマイズした上での乗り換えを検討しているという。
グループ内におけるBenesseChatの評判も上々と植田さん。社内アンケートで感謝のコメントが届く他、「○○をやりたいが、どうすればいいか」といった問い合わせが「一人ではさばけないくらい届く」という。
ただし植田さんはBenesseChatに関する個別のサポート対応は行っていない。あくまで集まった意見を参考に、仕様の変更や機能追加を検討・実施する立場という。その代わり、ベネッセにはBenesseChatに関する知見を共有する社内チャットが存在し、そこでユーザー同士が便利なプロンプト(入力する文章)などの情報を交換している。
ちなみに、同様のサービスを構築するに当たっては、ベネッセホールディングスのようにAzure OpenAI Serviceを使う他、米OpenAIが提供するChatGPTのAPIを使う方法がある。ベネッセホールディングスがOpenAIが直接提供するAPIを選ばなかった理由は2つあった。1つ目は同社がもともとMicrosoft Azureを活用していたことだ。2つ目は、当時米OpenAIのAPIにはサービスの品質保証がなく、エンタープライズの利用に耐えるかどうか判断できなかったからという。
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