「ゲーム業界目指す最低限できていない」──社長のSNS投稿が議論呼んだサイバーコネクトツーが、実は抱えていた育成の課題:CEDEC 2023(2/3 ページ)
ゲーム業界を目指す学生に対する社長の投稿がSNSで議論を呼んだサイバーコネクトツー。実は、社内では新人育成・採用の課題を抱えていたという。同社が取り組む対策とは。
「脱・指導の属人化」などで解決試みる CC2の施策
現場任せの育成により、複数の問題に見舞われたCC2。同社は対策として、大きく分けて2つの施策を実施した。「脱・指導の属人化」と、「育成に関する各種指標の明確化」だ。
まず前者については、これまで教育担当者ごとに異なっていた研修内容を統一。課題に取り組んでもらう「課題研修」と、実際にプロジェクトの現場で学んでもらう「OJT」を分けて実施するルールを設けた。
さらに研修の手順や内容はマニュアル化し、担当者によって指導の内容が異ならないように。当時、コロナ禍で指導や社員同士の勉強会がWeb会議上で行われるようになっていたことにも目を付けた。教育に生かせそうなものを録画し、誰でも視聴できるようにひとまとまりにすることで、共通した教材を利用しやすい環境も整えたという。
次に後者については、育成に必要なコストや、評価制度をある程度明確化。“なあなあ”になっていた部分を減らし、悪循環の解消を試みた。
例えば課題研修は3カ月、OJTは9カ月と明確な期間を定め、研修にはっきりとしたゴールを設けた。中ぶらりんになっていたキャリアパスも改善。ジュニアとシニアの間に新しいポジション「インターミディエイト」を新設した。
インターミディエイトは「技術やコミュニケーションなどに課題は残るが、頼まれた仕事は完遂できる」ことが基準のポジションだ。ランクアップすれば待遇も変わる。例えばOJT段階にあるジュニアは給与が最低23万1000円だが、インターミディエイトであれば最低27万円に上がるという。
人月計算のルールも変更。新卒については、入社後1年間は人月計上しないようにした。「新人をあてがって『何で人月管理できてないんだよ』といわれても、現場は『そんなこといわれても……』となるだけ。現場の負担にしかならないので、新卒に限ってルールを変えた」(宮崎副社長)
以上の施策で現場の負担を和らげ、新人を育てやすい環境を整備したサイバーコネクトツー。さらに、スキルや知識の偏りを防ぐとして他社との交流会も活発化。例えば「妖怪ウォッチ」などを手掛けるレベルファイブといった企業と、仕事の流れなどを相談し合う勉強会を開いたという。
一部の施策についてはすでに効果を実感しているものもあると宮崎副社長。例えば人月計算のルール変更については「効果が出ており、現場の納得度も高い」という。
関連記事
- 「費用度外視でサーバ増やせ」→「無駄なサーバ減らせ」に方針転換 スマホゲーム「シノアリス」運営の裏話
リリース直後、アクセスが集中した「シノアリス」。ピーク時は「Amazon EC2」約600台、「Amazon RDS」約200台を利用し「稼働させることが最優先」だったが、アクセスが落ち着いた今、サーバの削減を進めている。 - ゲーム業界の“男性育休”、上司は98%が肯定 マネジャー層に課題も セガやスクエニなど4社が調査
ゲーム業界は男性の育児休暇に理解があるが課題もある──セガやスクウェア・エニックスなど4社がこんな調査結果を明らかにした。育休を取得した人に「育休を申請したときの上司の反応」を聞いたところ、98%以上が肯定的な返答をした一方、マネジャー層の育休取得率が低い現状も明らかになったという。 - 半年で収益計画が破綻したスマホゲーは、なぜ4年以上続けられた? プロデューサーが作り続けた「期待感」
スマホゲーム「天華百剣 -斬-」は、リリースから半年で収益計画が破綻し、コスト削減を言い渡されたが、その後4年近くサービスを継続できた。そんな同作のプロデューサーは「未来への期待感」を重要視していた。 - ゲーミングとスパコンの融合が“新世界”を開く 理研・松岡聡さん語るゲームエンジニアへの期待
「CEDEC2022」最終日の基調講演に、理化学研究所・計算科学研究センター長の松岡聡さんが登壇した。松岡さんはスパコン開発の歴史や自身の経歴を話し、ゲームエンジニアの活躍が社会変革につながる可能性があるとエールを贈った。 - 勤務先がつぶれた“30代無職”が、インディーゲーム開発で成功をつかむまで
ゲーム開発者の佐藤大悟さんは、勤務先だったゲーム会社がつぶれ、30代で無職に。「自分がやりたいことは何か」を考え直し、モバイル向けインディーゲーム開発者として生きる道を選んだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.