インボイスで荷物届かなくなる? 競馬界にも激震 制度直前、高まる反対熱 「“消費税のネコババ”は誤解だ」(3/3 ページ)
消費税のインボイス制度のスタートが10月1日に迫る中、反対の声が熱を帯びている。インボイスに反対する有志が、が東京・霞ヶ関で記者会見を開き、財務省の担当者などに署名を手渡した。
影響は建設業から競馬界、農家まで
“一人親方”など免税事業者に支えられてきた建設業界への影響も甚大だ。東京土建一般労働組合の佐藤豊さん自身は課税事業者だが、インボイスが始まり、発注先を免税のまま支えたいと思うと、自身が税負担をかぶることになる。「ただでさえ資材が高騰している。消費税を価格に転嫁することもできない。インボイスが始まれば辞める人も出て、日本の住宅やビルを守れない」。
影響は競馬の世界にも及ぶ。競馬の調教師も個人事業主で、厩務員(馬の世話をする人)は調教師が雇用している。厩務員は、調教師からの給与と、馬が獲得した賞金の5%の報酬を得ていると、全国競馬産業労働組合連合会事務局長の田村隆光さんは説明する。
厩務員は「休み週1回、深夜労働、土日出張労働が当たり前」など過酷な労働環境かつ、「最低賃金も守れないほどの職場もある」など収入が低く、社会保険に加入していないケースも多いという。組合で労働条件改善を進めてきたが、ここにインボイスという名の“増税”が直撃。調教師の厩務員も、売上が削られることになる。「インボイスは死活問題だ」(田村さん)
小規模農家への影響も大きい。農民運動全国連合会の長谷川敏郎会長は、島根県で稲作と肉牛の飼育を手掛けている。飼料が高騰して経営がますます苦しくなる中、競りの名簿にインボイス事業者かどうかが表示されるようになり「免税事業者が買いたたかれる」ことを懸念。「米でも牛でも所得税を支払えない(赤字)のに、インボイスで消費税をむしりとる。牛飼いをやめるしかない」。行き着く先は、ただでさえ低い日本の食料自給率のさらなる低下だと危惧する。
自己破産しても免除されない……「生活再建難しくなる」
司法書士の立場からは「個人事業主の破産後の生活再建」という視点で危機感が語られた。全国青年司法書士協議会副会長の福本和可さんによると、消費税は経営が赤字でも納税義務が発生し、現状でも滞納額が大きい。自己破産すれば債務は免責されるが、税金や社会保険料は免除されない。「破産した場合は消費税が非免責債権として残る可能性が非常に高い。借金を負い、破産しても免責されないリスクがある状況では、事業を始めたい、チャレンジしたいという人が二の足を踏むのでは」(福本さん)
与党も賛成していない? 「問題あるならやめるべき」
STOP!インボイスは、与野党議員に対して地道なロビー活動を続けてきた。その中で「与党議員ですらもろ手をあげてインボイス制度に賛成している人はいなかった」と小泉さん。「みんな口をそろえて『決まったことだから仕方がない』と言うが、問題があるなら、政治の責任でやめればいいのではないか」
インボイスに反対する超党派議連のメンバーも9月4日、財務省で政務官にインボイス反対を伝えてきたという。議連に参加する立憲民主党の落合貴之議員は「インボイスは2016年に国会で決めたもので、もう変えられませんというのが政府の現状」と語る。「でも総理や財務大臣が決断したら、止めることはできる。全力でギリギリまで戦っていく」(落合議員)
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