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King GnuのMVや特撮でも活躍 空間を“召喚”する「バーチャルプロダクション」とは 裏には意外な技術も(4/4 ページ)

場所や時間、天候に左右されずに撮影できる「バーチャルプロダクション」が浸透しつつある。時間やロケの制約がある場合でもスムーズに撮影できるのが特徴だが、一体どういう仕組で実現しているのか、東京・江東区にあるソニーPCLの自社スタジオ「清澄白河BASE」を見学する機会があったのでその様子を紹介したい。

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3D化した演者を“無限召喚” UEだからできることとは

 Unreal Engineを使うことで実現した表現方法もある。それが空間そのものをスキャンして、役者、ダンサー、パフォーマーなどをデジタルデータ化する「ボリュメトリックキャプチャー」を使ったものだ。

 清澄白河BASEには、ボリュメトリックキャプチャー用のスタジオが併設されている。直径9m弱のスタジオで、直径6m、高さ3mの円柱状の中に、天井、上段、中段、下段と100台以上のカメラが配置されており、空間内を丸ごとスキャンできる。スタジオが小さいほどキャプチャーの精度は上がるが、そうなると身動きが取りづらくなる。クオリティーを維持したままダンスや複数人の演技ができるサイズとして6mをチョイスしたようだ(川崎にはより大きなスタジオがあるという)。


清澄白河BASEに設置されているボリュメトリックキャプチャー用のスタジオ

壁には100台以上のカメラが設置されている

 スキャンした3Dデータの活用幅は広い。ゲーム用途以外に、メタバースやxR分野でも使えるものだが、2D映像での活用がかなり多いという。例えば、ダンスグループであったりアイドルグループのメンバーを個別に撮影し、バーチャル空間上で同時に踊らせることができる。全員がそろって撮影する必要がないためスケジュール調整がしやすく、バーチャルカメラで自在にアングルを狙えるので「撮り逃し」がないという。


撮影したデータから3D形状を構築し、そこからカメラ映像で得られたテクスチャをマッピング

メタバースやARデバイス、ゲームなどキャプチャーしたデータはさまざまな使い方が可能

 そして3Dデータなので“再利用”が可能。映像作品に使った3Dデータをアセットとしてゲーム、スマートフォンアプリなどに広げることもできる。スマートフォンゲームなどは、Unreal EngineやUnityをベースにしているものも多く、3Dアセットの横展開がしやすくなっている。これは、Unreal Engineベースのバーチャルプロダクションにも当てはまる。スキャンした演者をLEDウォールに登場させて、リアル演者とバーチャル演者を共演させたり、バーチャル演者の“無限召喚”、サイズ拡大/縮小も思いのままだ。


赤いスーツを着たキャラクター(おそらくクワガタオージャ―)が図書館で踊っている様子。これは事前にボリュメトリックキャプチャーで収録したダンスモーションを、バーチャルプロダクション内の図書館空間に“召喚”させている

増えまくった踊るキャラクター。きちんと空間内のライティングがキャラクターに反映されているのが分かる

 バーチャルプロダクションは、カメラに連動する背景で「天候や時間帯、場所に関係なく撮影できる」という部分に注目が集まりがちだが、ゲームエンジンが高性能化したことで、ゲームやスマートフォンアプリ、AR/VR/MRだけでなく、映像の分野にも浸透しつつあることを示す最たる例ともいえる。基盤が共通化されることでアセットを共有しやすくなり、制作効率化などにつながるとともに、これらのエンターテインメントの垣根が薄くなっていることも感じさせる見学会となった。

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