テックスタートアップに逆風? IPO難民が大量発生中 業績が良くても新規上場できないワケ(2/2 ページ)
上場が可能な業績に達しているのに、IPOできないというスタートアップが業態を問わず増加しているという。何が起こっているのか。
証券会社の引受部門の担当者は会計・証券・経営・株式・IPOについて広範な知識が求められ、育成が大変だ。一方、引受部門の人材は他部門に転用することが難しく、再びリーマン・ショック時のようにIPO市場が冷え込んでしまったときのリスクが大きい。そのため「引受部門の人員をやみくもに増やすことは経営としては非常にリスクになる」(上野社長)として、なかなかキャパシティーが増えないという。
ならば、契約した企業の上場確率を上げ、結果として上場できる企業を増やす方向性はどうか。結論から言うと、こちらも簡単ではないのが実情だ。上場準備に入ってからの3年間は、企業にとって勝負の年。ざっくり「上場申請期に経常利益が3億円あれば上場にこぎつけられる」(上野社長)というのが基本的なイメージになる。
ほとんどの会社は、経常利益が1年目に1000万円、2年目に5000万円、3年目に3億円という3カ年の計画を持ってくると上野社長。実際にIPOに至る企業は、この業績計画を実現するわけだが、言うまでもなくそうそう簡単な計画ではない。主幹事証券会社と契約に至っても、上場に至る企業は10%程度という。
結局、主幹事証券は、IPO希望企業が月間30〜40社がエントリーしてくる中、1、2社に絞って契約を結ばざるを得ない。つまりほとんどの企業は主幹事証券との契約に至らずIPO難民となるわけだ。
一方、上野社長は「“難民”のうち10%は本当なら上場できたはず」との見解を示す。これら“本当なら上場できたはずの企業”にビジネスチャンスを見出す企業も出てきており、Payment Technologyもその1社という。
同社は主幹事証券に代わって上場準備の支援を2年程度行い、3カ年の計画が実際に形になった企業を証券会社に紹介する事業を進めている。主幹事証券会社がキャパシティーアップに消極的なことから、その隙間を埋める取り組みにも需要が生まれているわけだ。
2020年ごろ、上場に必要となる監査法人の確保に苦戦する「監査難民」が話題になった。金融庁でもこれを問題視した結果、デロイトなどが監査業務に復帰したが、オロが22年12月にまとめた調査によると、43.2%の上場を目指す企業が未だに「監査法人の確保」に苦戦している。
そんな中、主幹事証券会社のキャパシティーに端を発したIPO難民も、監査難民と同様以上に深刻な問題となっていきそうだ。
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