「アニメは世界に通用する」──ソニー、長期ビジョンの注力分野にアニメ 制作ソフトも開発中
ソニーグループの経営方針説明会で注目を集めたのは、同社のアニメ戦略だった。IP創出の取り組みとして注力していくことを表明。開発中のアニメ制作ソフト「AnimeCanvas」も紹介した。
ソニーグループは5月23日、2024年度の経営方針説明会を実施し、長期ビジョンと共に足下の取り組みを紹介した。吉田憲一郎会長兼CEOが経営の方向性として挙げたのは「エンタテインメントへの注力」と「クリエイションシフト」。中でも注目を集めたのは、同社のアニメ戦略だった。
ソニーグループにはゲーム、音楽、映画という3つのエンターテインメント事業があり、2023年度のグループ売上高の約6割を占める規模になった。2018年のEMI Music Publishing買収を起点として6年間で約1兆5000億円を投資してコンテンツ制作を強化したという。買収当時、吉田CEOは「長期的な成長に向けた布石」と説明していたが、正にそうなった。
21年にはAT&Tの子会社で日本のアニメを海外に配信している米Crunchyroll(クランチロール)を買収。現在、Crunchyrollは有料会員が1300万人を超える配信プラットフォームになった。「Crunchyrollの買収は、ディストリビューションサービスへの投資だった。日本のアニメを世界に広げることで、アニメクリエイターコミュニティに貢献することを志している」(吉田氏)。
続いて登壇した十時裕樹社長は、アニメを、IP創出を促進する「注力分野」の1つとして紹介した。アニメを世界に配信するCrunchyrollに対し、アニメ作品を生み出すのが、ソニー・ミュージックエンタテインメント(SMEJ)傘下のアニプレックスだ。同社は、A-1 PicturesやCloverWorksといったアニメ制作会社の親会社でもある。
十時氏は、「(アニメの)人気が高まるにつれ、新たな作品への需要が大幅に高まっている。現在は2つのアニメ制作会社を中心に、SMEJやソニーグループのエンジニアとも連携し、制作環境と効率の改善、作品品質の向上を図っている」として、開発中のアニメ制作ソフト「AnimeCanvas」を紹介した。
AnimeCanvasは、今年度中の試験導入を目指して開発を進めているというもので、将来的には、社外のスタジオへの提供も視野に入れている。この他、アニプレックスとCrunchyrollを中核として、海外のアニメクリエイターを育成するアカデミーの設立も検討を始めたという。
吉田CEOは「アニメは世界に通用する。以前はニッチだったが、今はグローバルで非常に大きなエンターテインメントになった」と高く評価。そしてクランチロールが配信の視聴データをアニメクリエイターにフィードバックする機能を持っていること、IP創出と共にファンを育てる取り組みとして「CRUNCHROLL ANIME AWARDS」を紹介し、アニメファンと同時にクリエイターにも目を向けていることをアピールした。
アニメに対するソニーの戦略は、これまでゲーム分野で展開してきた配信プラットフォーム+自社IPの強化という展開に近いようだ。十時社長は「配信プラットフォームとしての競争力を磨きながら、その中で自社IPを配信し、広がりというものをユーザーにアピールしていく。そんな世界を作りたい」と話している。
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