生成AIも予見? 楳図かずおさんに聞いたAIの話 「人間が人間を作ろうとしているだけ」:NEWS Weekly Top10
先日、漫画家の楳図かずおさんの訃報が伝わった。筆者は本誌のインタビューで一度だけ面識がある。2016年、東京・吉祥寺の「まことちゃんハウス」にお邪魔してインタビューに同席し、執筆を担当した。テーマはAIだ。
ITmedia NEWS Weekly AccessTop10
11月9〜15日ようやく秋らしくなってきた先週のアクセスランキングには、スマートフォンゲームからレールガン研究、退職代行、闇バイトまで、さまざまな話題が入った。
その前の先々週には、漫画家の楳図かずおさんの訃報が伝わった。88歳だった。
筆者は本誌のインタビューで一度だけ面識がある。2016年、東京・吉祥寺の「まことちゃんハウス」にお邪魔してインタビューに同席し、執筆を担当した。テーマはAIだ。(当時の記事:「人工知能? 人間が人間を作ろうとしているだけの話です」 楳図かずおさん)
お会いする前は、ひょうきんなホラー漫画家というイメージだった楳図さん。実際にお話しして、冷静で哲学的な希代のクリエイターだと感じた。
伺ったのは、楳図さん(79)が1982〜86年、「ビッグコミックスピリッツ」に連載したSF漫画「わたしは真悟」の世界と、現代のAIについてだ。
作中では、主人公の小学6年生・悟(さとる)とヒロインの真鈴(まりん)が、町工場の産業用ロボットにたくさん言葉を覚えさせる。するとある日、コンピュータが意思を持ち、世界中のコンピュータとつながる。やがて知能と感情を持ち、自らを「真悟」と名付け、学習・成長していく。
真悟がネットワークとつながって知識を得て、成長していくさまは生成AIのようだ。連載当時から、楳図さんはそうした技術を予見していたのだろうか。そう尋ねると「漫画の発想として描いただけ」とさらりと言う。
工場で働いていた真悟の父は、仕事がロボットに奪われ落ちぶれる。一方で真鈴の父はエリートで、英国でリッチな生活をする……など、これもAI時代を予見しているかのような内容だ。
いま、AIの普及で人間の仕事は実際に奪われており、格差拡大が助長されているとも言われている。今後、人間はどうなってしまうのか、不安になることもある。
楳図さんはAIの進化について「人間が人間を作ろうとしている」と喝破する。そして「人間は本能の底では、進化しようと一生懸命あがいている」と。
このインタビューは2016年。ChatGPTが世界を震わせる6年も前の内容だが、2024年の今でもじゅうぶんに示唆的だ。
楳図さんの肉体は空に飛んでいってしまったが、作品とメッセージは永遠だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「人工知能? 人間が人間を作ろうとしているだけの話です」 楳図かずおさん(79)
80年代の漫画作品「わたしは真悟」で、ネット社会や人工知能を予見した楳図かずおさん。30年経った今、テクノロジーの行き着く先をどう見ているのか。
詐欺電話に延々と応対し時間を浪費させるAIおばあちゃん、O2が開発
高齢者を狙った詐欺電話対策の一環として、英通信大手のO2がAIおばあちゃんチャットボット「デイジー」を発表した。おばあちゃんのように応対し、詐欺師から時間を奪う。
国産AIスタートアップ・PFNが“生成AI向けプロセッサ”独自開発、2026年提供へ 「GPUの10倍高速で省電力」
AIスタートアップ・Preferred Networksは、大規模言語モデルなどの生成AI向けプロセッサ「MN-Core L1000」の独自開発を始めると発表した。
米NVIDIA×ソフトバンク、日本の“AIインフラ構築”へ 孫正義氏「これは国家安全保障の問題」
米半導体大手NVIDIAとソフトバンクは、日本におけるAIインフラの構築で包括提携すると発表した。
メルカリ、サポート対応を巡り謝罪 問い合わせ多数で「心配かけて申し訳ない」 体制の見直し・強化へ
メルカリは11月17日、ユーザーへのサポート対応に関する声明を発表した。

