EU、Googleに広告技術で29.5億ユーロの罰金 事業売却の可能性も
欧州委員会はGoogleに対し、広告技術市場での地位濫用で29億5000万ユーロの罰金を科した。Googleは控訴する方針だが、事業売却を命じられる可能性もある。トランプ米大統領は「不公平だ」と批判し、報復措置を示唆した。
欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会(以下「委員会」)は9月5日(現地時間)、米Alphabet傘下のGoogleがディスプレイ広告技術市場で支配的地位を濫用し、EU競争規則に違反したと認定する決定を採択し、29億5000万ユーロ(約5100億円)の罰金を科すと発表した。
委員会は2021年6月にこの件の正式調査を開始し、ChromeブラウザにおけるサードパーティCookie廃止計画「プライバシーサンドボックス」や、YouTube、Google広告、Androidなどのプラットフォームでの広告技術利用状況を調べてきた。その結果、Googleが広告サプライチェーンで自社サービスを競合他社や広告主、パブリッシャーよりも優遇し、欧州市場に悪影響を与えたと結論付けた。
罰金に加えて、委員会はGoogleに違法な慣行の停止と利益相反の解消を命じた。Googleは60日以内に順守計画を委員会に提示する必要があり、実効性のある措置を示せなければ、委員会は構造的な是正策を命じる可能性がある。委員会は広告事業の一部売却などが唯一の有効な方法になり得ると示唆している。
委員会はこれまでGoogleに対し、ショッピング検索、Android、広告仲介サービスに関する制裁を科しており、通算すれば4件目となる。
Googleは英BBCなどに対し、控訴する意向を示した。同社規制問題担当グローバルヘッドのリー・アン・マルホランド氏は、この決定は不当であり、数千の欧州企業の収益機会を奪うと主張。広告購入者と販売者のサービスには反競争的要素はなく、代替手段も存在すると反論している。
ドナルド・トランプ米大統領も自身のSNS「Truth Social」で「非常に不公平だ」と批判した。罰金は米国の投資や雇用を阻害するものであり、政権として差別的な行為を許さないと強調。欧州のハイテク企業への調査や関税発動の可能性を示唆したほか、2016年に米Appleがアイルランドに約170億ドル支払うよう命じられた件にも言及し、さらに不公平な処分が続けば、米国通商法301条に基づく報復措置の発動を検討せざるを得ないと警告した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
Google独禁法訴訟、排他的契約の是正命令 「Chrome分割」は回避
米連邦地裁はGoogle独禁法訴訟で、排他的契約の是正を命じたが、Chromeなどの事業分割は退けた。Appleとのデフォルト検索契約などが禁止される。検索データの一部を競合他社に提供することも義務付けられた。Googleは控訴するとみられる。
公取委、Googleに独占禁止法違反で排除措置命令 自社サービスの初期搭載を巡り
公正取引委員会(以下、公取委)は4月15日、Googleに排除措置命令を下した。Androidスマートフォンのメーカーに対し、自社の検索サービスやブラウザを優先的に設定させる契約を結んでいたことが、独占禁止法に違反すると判断した。
EU、Google検索とPlayストアがDMA違反との予備的見解
欧州委員会は、Googleの親会社Alphabetがデジタル市場法(DMA)に違反しているという予備的見解を発表した。Alphabetには書面で回答する権利がある。最終的に非順守と判断されれば、DMAに基づき制裁金が科される可能性がある。
EU、Googleの広告事業に関する独禁法調査開始
EUの欧州委員会が、Googleを独禁法違反の疑いで正式調査すると発表した。Googleが自ら運営する広告サプライチェーンで自身の広告を優先的に扱うことで、競合する広告主とパブリッシャーに損害を与えた可能性を調査する。
