VAIOに何が起こったか――Do VAIO篇(2/2 ページ)
“第2章”と言われる夏VAIO以降、VAIOは「行為を表す言葉」になるという。その象徴となるインタフェースが「Do VAIO」だ。一見すると、PSXのそれによく似ているが、その性格はまったく異なる。今回はこの「Do VAIO」をベースに、VAIOがどこを目指そうとしているのか、考えてみよう。
PSXのGUIは、テレビ・音楽といった大ジャンルを横、その中身は全部縦一列という、マトリックス(映画の、ではなく行列という意)状に配置したのがポイントだ。これは録画した番組や音楽1曲といった末端にいながら、一気に他の大ジャンルにジャンプできるという特性を持っている。例えば音楽を聴いていて、「あ、そうだこないだ録画した映画見なきゃ」みたいな、突然思い立った気まぐれな動作を許容するものである。
その代わり、大ジャンルに属するコンテンツは全部縦一列で並ぶため、カテゴリー分けといった概念が薄い。したがって数え切れないほどの膨大な数のコンテンツを管理し、そこから目的のモノを探すといった能力は弱い。まさにそれは、HDD増設などが簡単にできない、白箱機器らしいGUIのあり方だと言える。
それに対してDo VAIOのGUIは、大ジャンルが縦、枝葉は横になっている。こう書くと、縦横逆にしただけじゃん、と思われるかもしれないが、Do VAIOの横列は、ツリー構造になっている。右にどんどん移動すれば、ツリーの末端、つまり小枝から葉っぱの方に移動していき、左に移動すれば葉っぱから幹のほうへ上っていく。大カテゴリーの移動は、トップメニューに戻って行なうのが近道だ。AppleのiPodを持っている人には、ああいう感じだと言えば話が早いかもしれない。
Do VAIOの特徴は、同じ大ジャンル内のコンテンツも、複数の分類法が提供されている点である。例えば音楽であれば、アルファベット別、ジャンル別、まだ一度も聴いてないもの、といったカテゴリーから、コンテンツを探していける。これは、膨大な数のコンテンツの管理・検索が容易であることを表わしている。
その代わり、他の大ジャンルに対しては、GUI上では一気に飛んでいけない。ツリーを上に上っていく行為が必要になる。そのフォローとして、リモコンには大ジャンルへ一気にジャンプするための、ダイレクトボタンが付けられている。従来のリモコンにもあった、[テレビ]や[フォト]といったボタンだ。
こう比較してみると、一見似たようなGUIだが、構造的には全然違っている。やっぱりPSXはゲーム的であり、Do VAIOはPC的だ。
Do VAIOはどこへ向かうのか
現時点のDo VAIOは、見る・聴くという、再生専用機能に終始している。唯一クリエイティブ的な要素といえば、テレビ番組のDVD書き出しぐらいであろうか。まあテレビ録画も、一応ファイルを生産するわけだから、クリエイティブと言えないこともない。
これの意味するところは、Do VAIOで楽しむための素材取り込みは、Do VAIO自体でできない、ということである。音楽CDを取り込むにも、写真を取り込むにも、DVカメラの映像を取り込むにも、すべて従来どおり個別のアプリケーションを起動して、取り込み作業を行なう必要がある。
VAIOの意味は、“Video Audio Integrated Operation”であることはよく知られている。このコンセプトと照らし合わせてみると、出力はあっても入力がない今のDo VAIOは、本来目指すところの半分まで来たといった状況だ。次の目標は、それぞれの取り込み機能をDo VAIOに載せていく作業になることだろう。
そしてDo VAIOが完成したとき、いやそれがいつになるかはわからないが、そのときそれが搭載されたVAIOは、パソコンの形をしているだろうか。いや、そもそもパソコンと呼ぶべきデバイスだろうか。本体の進化とともにDo VAIOの進化は、今後のPC業界をもう一度牽引していく役目を担っている。
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