“ネイティブ”は“ネイティブ?”に勝るか──Phenom出荷直前レビュー:イマドキのイタモノ(3/3 ページ)
19日に発表されたAMDのクアッドコアCPU「Phenom」がいよいよ出荷される。この記事を読んで、会社の昼休みにショップに駆けつけるかどうかは「自由だぁぁぁぁっ!」
ライバルは「Core2 Quad Q6600」か? Phenom 9600のパフォーマンス
それでは、ベンチマークテストで測定したPhenom 9600の性能を見ていこう。なお、用意したベンチマークはCore 2 Extreme QX9650のレビュー記事と同じで、環境もCPUに依存するメモリ、チップセット以外は同等としている。
なお、今回入手したサンプルは今回登場する2つのPhenomのうち、上位モデルとなるPhenom 9600(2.3GHz、ベース200MHzの11.5倍)だが、Spider用のオーバークロックツール「AMD OverDrive」を利用してCPUのクロック倍率を11倍にして2.2GHz、つまりPhenom 9500相当にした設定も計測した。完全な結果とは言い難いが、参考データとして掲載する。Phenom 9500の購入を検討しているユーザーは一応の参考にしていただきたい。
CPU | Phenom 9600 | Athlon 64 X2 | Core2 Duo/Core2 Extreme |
---|---|---|---|
チップセット | AMD790FX | nForce 590 SLI | Intel X38 |
マザーボード | MSI K9A2 Platinum | FOXCONN C51XEM2AA | ASUS P5E3 |
メモリ | DDR2-800 | DDR2-800 | DDR3-1333 |
メモリモジュール | PC2-6400(5-5-5) | PC2-6400(5-5-5) | PC3-10666(7-7-7) |
容量 | 2Gバイト | ||
GPU | NVIDIA GeForce 8800 GTX | ||
グラフィックスメモリ | 768Mバイト | ||
ドライバ | ForceWare v163.69 | ||
解像度 | 1280×1024ドット/32ビットカラー | ||
HDD | HGST HDT725050VLA | ||
フォーマット | NTFS | ||
OS | Windows Vista RTM版 |
Phenom 9600のパフォーマンスだが、シングルスレッドの処理が依然として多いSYSmark 2007 Previewではあまり思わしくない。動作クロックではPhenom 9600より速い従来モデルのAthlon 64 6400+(3.2GHz)にも及ばない。これはSYSmark2007の詳細結果を見ると原因が分かる。個別のテスト結果でPhenom 9600がAthlon 64 6400+を上回っているのは「Video Creation」などのマルチスレッド処理が多いベンチマークで、逆にマルチスレッド処理のウエイトが低い「Productivity」(Officeなどを利用した文書作成を用いたベンチマークテスト)では、Athlon 64 X2 6400+がPhenom 9600を上回っている。
デュアルコアのAthlon 64 X2 6400+からクアッドコアのPhenom 9600に替えることでユーザーにもたらされるメリットは、マルチスレッドに対応したアプリケーションで顕著に出ているものの、動作クロックが性能に大きく影響するオフィスアプリケーションでは、動作クロックが下がっているPhenom 9600で性能が低下する傾向が見られることになる。
同じような傾向は、ほかのベンチマークでも確認されている。ビデオエンコーディング、3DMark06 <CPU>、LOSTPLANET EXTREME CONDITION <Cave>、CineBench 10 <Multi>といったマルチスレッド処理を多用するベンチマークではAthlon 64 X2 6400+を上回ったものの、マルチスレッド処理が行われないFinal Fantasy XI Official Benchmark 3 Version 1.0では、Athlon 64 X2 6400+を下回る。
インテル製品との比較では、クアッドコアのCore 2 Quad Q6600に近い性能を発揮している。SYSmark 2007 Previewを除けば両者拮抗する結果になっており、Core 2 Quad Q6600を若干下回る結果というのが妥当な評価になるだろうか。
「AM2」ユーザーのクアッドコア導入に手頃な選択肢
Phenom 9600の性能は、インテルのCore 2 Quad Q6600相当というベンチマークの結果であったが、AMDもそのように考えているようで、1000個ロットあたりの価格が283ドル(約3万2千円)という設定は、Core 2 Quad Q6600の価格、266ドル(約3万円強)に近い。
「AMDの新しいアーキテクチャが、インテルを一挙に追い越す」という状況を期待しているユーザーも少なくないだろう。そういう人たちにとって、Core 2 Extremeはもちろんのこと、その下のグレードであるCore 2 Quad Q6600と同じ程度という、このレビューで示されたベンチマークの結果は、不満に思えるかもしれない。
しかし、ここで説明を少し加えておきたい。1つには、今回登場するPhenomが“FX”モデルではないというラインアップ的な事情、もう1つが、先に述べたように、Phenom 9900、Phenom 9700という高クロックモデルを2008年の第1四半期に予定してことだ。
また、Phenomが65ナノプロセスルールを採用していることも留意しておく必要があるだろう。すでに、インテルのCore 2 Extreme QX9650は、45ナノプロセスルールという、AMDより一歩進んだ技術を利用している。プロセスルールのビハインド(後追い)は、最近のAMDにとって恒例となりつつあるが、AMDによいニュースがあるとすれば45ナノプロセスルールは技術力に定評のあるIBMとの共同開発で、投入時期も65ナノプロセスルールのように、インテルから大きく遅れることはない見通しだ。AMDの計画では、2009年前半に「Deneb」と呼ばれる45ナノプロセスルールのCPUを投入する予定になっており、そのときにはおそらくより高クロックの製品を出せるようになるだろう。
ただ、現行のPhenomも、コストパフォーマンスという観点では、インテルのCore 2 Quadに匹敵する。加えて、既存のAM2マザーボードを持っているユーザーも、(HT3.0は使えないとしても)BIOSを最新版にするだけで今のCPUと取り替えるだけでクアッドコアCPUを導入できる。すでにAM2マザーを所有しているユーザーであれば、コスト的には大きなメリットといる。ビデオエンコードなどのマルチスレッド処理対応アプリケーションを常用しているユーザーであれば、ぜひ導入を検討してみる価値があるだろう。
関連記事
「Phenom」のロゴが光る「AMD 790FX」マザーが登場――CPUも11月中?
AM2+プラットフォームに対応するAMD 790FXを搭載したマザーが、アキバのショップに入荷。そのパッケージのロゴになっている「Phenom」も近日登場するという噂が広がっている。Phenom「もうすぐ」はじめます──秋葉原にPhenomポスターが出現
よく晴れた11月12日、次の日は米国時間の11月12日という、月曜日のお昼どきに秋葉原である異変が起きた。「Phenomが年内に間に合わなかったら丸坊主に」兄貴が宣言
今週末、AMDがAthlon 64 X2 Black Editionの店頭イベントを決行。また、同じ時間にNVIDIAはSLIマシンを使ったゲーム大会を開催していた。AMD、「コアが3つ」のPhenomを追加
Phenomのラインアップはクアッドコアの「Phenom X4」とデュアルコアの「Phenom X2」が予定されていたが、そこに「奇数コア」モデルが急きょ加わった。Analyst DayでチェックするAMDの最新ロードマップ
7月27日、AMDはTechnology Analyst Dayを開催し、将来の製品計画の概要に関する情報を公開した。ここではその中から、今後登場する主要なプラットフォームの情報を紹介する。「Phenom X4は年内に必ず出します」――静かに火花を散らすAMDとインテル
アキバでAMDとMSIがイベントを開催。MSIのゲストに呼ばれた“神様”がAMDの会場を視察し、にこやかに火花が散る場面も。AMD、コンシューマー向けCPUの名称を「Phenom」に
長く親しまれてきた「Athlon 64」が新しいブランドに移行する。新しい名称は「驚異的な!」の意味を持つ単語をベースに考案された。「ユーザーに負担をかけないクアッドコア」──“Barcelona”Opteronに実装された機能
9月10日に発表された“Barcelona”クアッドコアOpteron。ここでは、リリース資料に含まれなかった“Barcelona”の機能について紹介したい。“Barcelona”対応nForce 680a SLIマザーも登場──「クアッドコアOpteron発表会」
米国でBarcelonaがリリースされた翌日に、日本でも製品発表会が行われた。会場には、Barcelonaに対応するマザーボードやサーバシステムも多数展示されていた。AMD、“Barcelona”Opteronを発表
クアッドコアのAMD製CPUが「ようやく」登場する。リリース発表後、AMDのWebページでラインアップと価格、主要スペックなどが明らかにされた。- AMD、4コアOpteronの詳細を発表
4個のコアを搭載したクアッドコアOpteronは、現在出荷中のデュアルコアOpteronより40%~70%程度性能が高いという。 「Torrenza」「Fusion」にかける新生AMD
先日米国で行われた「2006 Analyst Day」の日本向けダイジェスト版が米国本社のマーケティング最高責任者によって行われた。新世代「45ナノ」CPUの実力を「SYSmark2007」で知る──Core 2 Extreme QX9650
45ナノプロセスルールの時代がもう目の前まできている。その“Penryn”の性能を新世代のベンチマークでじっくりと確かめてみた。倍率変更がフリーになった“黒箱”で遊ぶ──Athlon 64 X2 5000+ Black Edition
最初のBlack Editionが登場したとき、多くのユーザーは「これが最後でしょう」と思ったが、AMDの土居“アニキ”が「これは遊べるっ」とイチオシする真打ちが登場した。TDPが89ワットにリニューアル──Athlon 64 X2 6000+
AMDはネイティブクアッドコア“Barcelona”を準備する一方で既存のAthlon 64 X2の拡張を続けている。8月31日にAMDが発表したAthlon 64 X2 6000+はTDPを大幅に下げた。FSB1333MHzで性能はどうなる?──「Core 2 Extreme QX6850」「Core 2 Duo E6750」を検証する
“噂”によればFSB1333MHzに対応したCore 2シリーズがまもなく出荷を開始するそうな。インテル、そしてNVIDIAのチップセットが先行していた「FSB1333MHz」はユーザーにどんな世界を見せてくれるのだろうか。クアッドコアの最高峰「Core2 Extreme QX6800」の性能を知る
インテルは“Core 2 Extreme”の最新製品となるQX6800を発表した。Kentsfeildの開発コード名で知られるCore 2 Extreme QX6700の後継で、動作クロックが2.93GHzに引き上げられたことが特徴だ。Core2 Duoに追いつく?トップグレードのAthlon 64 X2 6000+を試す
AMDは「Quad FX」というトリッキーな手法で高性能を目指すと思えば従来のアーキテクチャでも性能アップを実現しようとしている。3GHzクラスX2の性能やいかに。Core2 Quad Q6600は“みんなのKentsfield”になれるかな
マルチスレッド対応のエンコードソフトで圧倒的な処理能力を誇るクアッドコアCPU。そのエントリークラスになるCore2 Quadのパフォーマンスの迫る。消費電力でCore2 Duoと渡り合えるか──“65ナノ”Athlon 64 X2を試す
消費電力でCore2 Duoと渡り合えるか──“65ナノ”Athlon 64 X2を試す。「CPUを購入すればもう1つ入っています」──Quad FXプラットフォームの実力は?
開発コード名「4x4」で知られてきた「Quad FX」が登場した。2つ入ってこれまでのAthlon 64 FXシリーズと同じ価格のCPUがもたらすQuad FXの性能に迫る。クアッドコア“Kentsfield”で幸せになるのは誰だ
インテルのクアッドコアがまもなく市場に登場する。IDFで喧伝された「75%の性能アップ」は真実か? 「Core2 Extreme QX6700」でその性能を検証する。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.