“生ジョブズ”への遠い道のり――「Macworld Expo 2008」開幕直前リポート:Expo出展数は488へ増加(2/2 ページ)
いよいよスティーブ・ジョブズ氏の基調講演でMacworld Expoが幕を開ける。その24時間前には、すでにモスコーニ・ウェストの周囲に長い行列ができていた。一足先に、IDG幹部へのインタビューやOffice 2008 for Macのイベントをリポートしよう。
「Office 2008 for Mac」がついにデビュー
一方、1月14日から始まったMacworldのカンファレンスセッションでは、マイクロソフトも「Office 2008 for Mac」の発売を記念して、朝9時から夜6時半まで、1日がかりのセッションを開催している。
同イベントには、新聞や雑誌に登場するプロダクトマネージャーだけでなく、製品開発に近い立場、製品の開発を統括している人や製品の企画を出している人も壇上に立ち、Office for Macを真剣に使っているユーザーたちから質問を受けていた。
マイクロソフトのイベントが行われたのは、2006年までスティーブ・ジョブズの基調講演が行われていたモスコーニセンター・サウスのボールルーム。部屋は仕切って狭くしてあるが、それでも数百人分用意された席はすべて埋め尽くされていた。
会場に行って驚いたのが、参加者の年齢層が幅広いこと。30代、40代くらいの人も多いが、それにもましてシニア層が大勢いた印象を受ける。そして女性参加者の比率も高い。「Wordでメモをした項目はアルファベット順にソートできるのか?」(ちなみに答えは“できる”)、「前のバージョンでは、~~~だったが、それはこのバージョンでは直っているのか?」など、かなり使い込んでいることを感じさせるするどい質問が多かった。
Office 2008 for Macのイベントは、こんな一言で始まった。
「今日は1日長いカンファレンスになりますが、どうかスピーカーや周囲の方の迷惑にならないように、iPhoneやそのほかの携帯電話をマナーモードにしておいてください」
さすがMacworldだけあって、会場内はiPhoneユーザーだらけ。ここまでくると他社の携帯電話を使っているほうが目立ちそうだ。明日の基調講演では、会場内にいるiPhoneユーザーがどれくらいいるのか、ぜひジョブズCEOに聞いてもらいたいところだ。
さて、歓迎のあいさつに続いて、この日のMCを担当したのはカート・シュマッカー氏だった。Macを「誕生前から使っている」という同氏は、実は元アップルの先端技術グループにいた人物だ。その後、コネクティクスという会社に移籍し、Virtual PCという仮想化ソフトの開発に関わっていたが、これをマイクロソフトが買収したために、マイクロソフトへ入社。しばらくVirtual PCを担当した後、自分の好きなMac用ソフトの開発に戻ってきた。
シュマッカー氏は、細部までこだわったOffice 2008 for Macのユーザーインタフェースについて語った。
マイクロソフトではOfficeの開発にあたって、膨大なリサーチを実施している。そうしたリサーチの結果によると、「MacユーザーはWindowsユーザーに比べて、たくさんのアプリケーションを使っていることが多い」(同氏)という。数多くのアプリケーションを切り替える環境では、個々のアプリケーションが好き勝手なユーザーインタフェースを採用していると、見ていてわずらわしい。
このため新Office for Macは、外観をほかのMac用アプリケーションとそろえ、調和しやすくした。例えば、これまでOfficeアプリケーションの利用中に表示されていた画面を横断するツールバーがなくなり、ほかのMac OS Xアプリケーションと同様のシンプルなウィンドウ構成になった。そしてウィンドウと一体化したツールバーは、隠してしまうこともできる。
このようにほかのアプリケーションとの調和をはかる一方で、Office 2008 for Macでは、いま現在どのアプリケーションを使っているのか分かるようにするため、使用中のアプリケーションを示す色をツールバーにさりげなく(うっすらと)入れているのだという。
また、すべてのユーザーが同じ機能を使うわけではないこと、すべてのユーザーがすべての機能を同じ頻度で使うわけではないことに配慮して、使わない機能をツールバーから取ってしまう機能も用意された。
一方、Word 2008 for Macの開発を担当するハン イー・ショー氏は、Wordの5つのモードについて、1つ1つ新機能を説明した。
その中でも目を引いたトピックが、Word 2008 for Macの新機能の1つであるページレイアウトビュー(DTPソフトのように画像やテキストを配置できる)に関するものだ。このページレイアウトビューでは、テキストボックスという文章用の流し込み領域を作成し、そこにテキストを打ち込んでいくのが基本となる。このとき前後で関連していない文章(つながっていない文章のテキストボックス)は枠線が違う色で囲まれるといった、非常に細かな改良点も披露された。
Office 2008 for Macの新機能は、これまで日本でもかなり詳細な紹介が行われてきたが、細部に目を向けると、まだまだいろいろな変更がありそうだ。
なお、1時間の休憩を含めて約9時間半にもおよぶセッションの最後には、「Office 2008 for Mac」の最上位パッケージである「Special Media Edition」(英語版)が、15日の販売開始に先駆けて全参加者に進呈された。高価なパッケージをぽんともらえる(もちろん参加費用はかかるが)ことがあるのも、Macworldの魅力の1つだろう。
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