MacBook Airから見える新しい風景:MacBook Airレビュー前編(4/4 ページ)
冷たく、静かで、どこまでも美しい1枚の板――MacBook Air。その先には、新しいPCライフスタイルが広がっている。前編では、Mac歴20年の林信行氏がMacBook Airに対する思いを織り交ぜつつ、その思想的背景に迫る。
MacBook Airが、美しさの定義を変える
MacBook Airは、ノートPCに見る美しさの定義をも変えてしまう。この製品を眺めた後では、これまでエレガントとされてきたMacBookやMacBook Proでさえ、どこかヤボったく思えてくる。他社のPCと比べたらまるで異次元の製品のようだ。
MacBook Airが史上最薄のノートPCか否か、といった議論もあるが、1番だろうが2番だろうが、そんなことは問題ではない。ここまで美しいPCはほかにないのだ。
アルミ筐体は、PowerBook G4シリーズから脈々と受け継がれてきたものだが、これまでのアップル製アルミノートは、容積を最大限に生かす弁当箱型のデザインが施されていた。それに対してMacBook Airでは、エッジ部分での薄さを強調するために、角のアールがもっとゆるやかなものになっており、光があたるときれいなグラデーションを楽しむことができる。
PCはいまや廉価な製品でもそれなりの性能を期待できるようになった。そんな中、アップルがMacBook Airで行なったのは、今日の製造技術を、生活スタイルをも変える美しさに向けることだった。アップルは、PCでも美しさが重要だということを、どこよりもよく分かっているメーカーだ。
そのアップルも、今回のMacBook Airでは、よほどの自信があったのだろう。製品パッケージが従来のようなカバン型ではなく、ふたを取り外せる玉手箱型になっており、このふたを外すと、いきなりMacBook Airの美しいサーフェイスが姿を現し(透明のラッピングがされている)、オーナーはしばしその美しさと対峙(たいじ)することになる。
過去を振り返ってみても、PCにこのようなパッケージングを施した企業は、アップル以外にないはずで、こうした演出も多くの人々がアップルの製品に魅了される理由の1つなのだろう。
美しさには覚悟も必要だ。美しく見える人々は、美しくあることへの覚悟も違う。MacBook Airは、それに通じる覚悟を感じさせてくれる。多くの人は、長時間の移動に備えて「交換用バッテリーがあると便利かも」といった漠然とした不安を感じる。筆者もこのクチで、マシンを買い替えるごとに常に交換用バッテリーも購入していた。しかし、結局、普段の生活では使うことがなく、片方のバッテリーは充電しないままダメにしてしまうことが多い。
MacBook Airは、そうした往生際の悪さを許さない。その代わりにバッテリー駆動時間を延ばし、バッテリーを交換不可にし、底面部をつぎ目のない美しい1枚の板に変えた。
ちなみにMacBook Airの公称バッテリー駆動時間は約5時間だが、フル充電状態から電源アダプターを抜き、省電力マネージャーを「バッテリー寿命優先」に切り替え、しばらく放置したところ表示されたバッテリー動作時間予想は「4時間6分」だった。これはバックライトの明るさが真ん中のときで、バックライトを暗くしたところ、5時間13分と表示された。実際の試用では、3時間程度は仕事ができるという印象だ。電力を消費する要因の1つだった光学式ドライブがなくなり、新しいコンピューティングスタイルを強要されるため、バッテリー駆動時間が極端に増減することもないだろう。
電源アダプタも一回り軽く小さくなったため、一緒に持ち歩いても苦にならない。もちろん、今回のMacBook Airでも、リサイクル可能なアルミ筐体、ヒ素を含まないガラスを使った無水銀の液晶ディスプレイ、ポリ塩化ビニル(PVC)と臭素系難燃剤(BFR)を使わない基板、そして輸送時の燃料を削減するパッケージの小型化など、徹底的に環境にも配慮している。
アップル共同創業者のスティーブ・ジョブズ氏は若い頃から「禅」を学んでいる。このMacBook Airもどこか禅的な美しさを漂わせている。そのためか、Macworld Expoで初めてMacBook Airを見たときから、シンプルな「和」のテイストとも、非常によくあう気がしていた。
製品が届いてすぐに試してみたのが、この製品を和室や和食器と並べてみることだった。そこで撮った写真を文字中心の本稿にそえる形で散りばめたので、その写真を通してこの製品の美しさを感じてもらえればと思う。
さて、レビューの後編では、新機能や性能についてもう少し踏み込んで検証していくつもりだ。
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