“45ナノ”でPhenomが飛翔する──“Denebコア”Phenom II X4の性能に迫る:イマドキのイタモノ(3/3 ページ)
登板イニングが予定より長かった65ナノ版Phenomに、ようやく45ナノプロセスが加わった。消費電力やパフォーマンスがいかに改善されたか検証する。
Phenomシリーズから大幅に改善されたPhenom II
CPUやメモリなどの性能を個別に計測するSandra 2009.SP2 v15.72の測定結果数値では、「CPU Arithmetic」と「CPU Multimedia」、メモリ特性を計測する「Memory Bandwidth」の3項目に注目したい。このベンチマークテストはSSE 4.2に対応しているため、Dhrystone/Whetstoneの測定結果ではPhenom II X4はCore i7シリーズとCore 2 Extreme QX9770に明確な差を付けられている。また、CPU MultimediaのMulti-Mediaでは、クロック数の高いCore 2 Extreme QX9770に及ばないものの、Phenom X4 9950 Black Editionを上回る結果を出している。
Memory Bandwidthによるメモリ周りについては、メモリコントローラを内蔵している分、Core 2 Extreme QX9770より優れた結果が出ている。ただ、メモリコントローラを内蔵しているCore i7シリーズに対しては、DDR3とトリプルチャネルの影響のためか、Phenom IIシリーズは大きく引き離されている。PCMark05 Build 1.2.0でも、全体的にSandra 2009と同じ傾向が出ている。
アプリケーションを用いたベンチマークテストではSYSmark 2007 Preview、PCMark Vantage、CineBench 10、CrysisのCPU Benchmarkを使ってそれぞれ性能を測定している。これらの結果からは、Phenom II X4シリーズがPhenom X4 9950 Black Editionからかなり性能を向上させたことが分かる。特殊命令を多用しない単純なMPEG変換やCrysisのCPUベンチでも、Phenom II X4シリーズの結果は高い。
また、消費電力のピーク値に注目してみると、Phenom II X4 940はPhenom X4 9950 Black Editionから40ワットもの省電力化が図られていることが分かる。
以上、測定したベンチマークテストの結果から全体的な性能を評価してみると、Socet AM2+からのアップデートが可能であることやメモリがDDR2であることなど、システムの移行に必要となるコストの安さといったユーザーにとって重要な要素において、Phenom II X4シリーズはユーザーに好ましいバランスを示しているといえる。
原稿執筆時点で確認されているPhenom II X4 940の実売価格は275ドル、Phenom II X4 920は235ドルと予想されている。従来のマザーボードなどがほぼそのまま使えることを考えると(ただし、多くの場合でBIOSの更新を必要とする。詳しくはマザーボードベンダーのWebサイトで情報を確認していただきたい)、コストパフォーマンスは十分に高いと考えられるだろう。
ベンチマークテストの結果を見る限り、Core i7シリーズに対しては、明確な違いがあるものの、これについては、DDR3 SDRAMに対応したSocket AM3版Phenom II X4での巻き返しが行われることに期待したい。また、現状のPhenom II X4についても、Phenom II X4 940は倍率を変更できるBlack Editionとなっているため、ユーザー側でオーバークロックによるパフォーマンスアップも期待できる。
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